東日本大震災では超高層を揺らす周期の波はほとんど出ていなかった

──東京の人は「東日本大震災で大丈夫だったから」と思っています。

 東京は北で起きる地震では揺れにくく、西で発生する地震では揺れやすい地下構造になっています。しかも東日本大震災の時は、超高層を揺らすような周期の波は震源からほとんど出ていませんでした。南海トラフには、付加体(柔らかい堆積物)もあるから揺れはよく伝わるし、南海トラフから東京までの距離は、東日本大震災の震源より近いのです。ということは東京はもっと揺れますよね。

 東京湾に多い石油タンクも長周期でよく揺れます。それらの安全性もきちんと確かめる必要があるでしょう。

──これからどうするといいのですか。

 エクスポージャー(暴露、Exposure)、バルネラビリティ(脆弱性、Vulnerability)、ハザード(自然現象の大きさ、Hazard)の組み合わせで、災害リスクの大きさが決まります。

 日本の場合、人口集中を是正して、暴露人口を減らすことが必要です。これは国土利用のあり方を見直すしかなく、国土形成計画でうたっていることです。

 そして、ハザードの小さいところに移転すること。地盤が悪くて揺れやすいところなど、昔は人が住んでいなかったようなところを避ける、土地利用を適正化することです。

 最後の脆弱性をなんとかしようというのが耐震化になるわけです。

 これが3本揃って初めて安全な国になります。

 土地利用を見直したくないのであれば耐震安全性を上げる必要があるし、人が集中するのを是正しないのなら、災害に襲われた時の影響が大きいから上乗せで安全性を入れておこう、というふうにしないといけない。3つをうまくバランスさせることが必要です。大都市集中も土地利用も今のまま、耐震基準も最低基準のまま、というわけにはいきません。