南海トラフ巨大地震による津波を想定した避難訓練で、机の下で身を守る大分県臼杵市の小学生=2021年3月11日(写真:共同通信社)

 南海トラフ地震は100年から150年ぐらいに一度の頻度で襲来することが知られています。前回の東南海地震(1944年)、南海地震(1946年)から、約80年経過しました。

 次の南海トラフ地震が、もし最大規模だったら最悪の場合は約30万人が亡くなり、経済被害は270兆円とも想定されています。津波の被害が注目される南海トラフ地震ですが、今回は福和伸夫・名古屋大名誉教授に建築分野について話を聞きました。

揺れによる建物倒壊、大火災も想定すべき

──南海トラフの大地震、津波から逃げれば良いのですか。

 それは単純すぎます。被害想定では、南海トラフ巨大地震では約7万3000人が建物の倒壊、言い換えると揺れで亡くなると想定しています。東日本大震災の際に津波で亡くなった方の約4倍ですよ。津波から逃れれば良い、というわけではありません。

福和伸夫・名古屋大学名誉教授

 津波だけでなく、阪神・淡路大震災のような建物倒壊、関東大震災のような火災もあわせて起こるかもしれないと思って備えた方がいいのです。我が家は高いところにあるから津波には安心、と油断してはいけません。

──日本の耐震規制は世界で一番厳しいと聞いていましたが。

 どのくらいの揺れを想定しているか、そのレベルと、法規制をどう守らせているか、二つの側面があります。日本はどちらもそれなりに厳しいと思います。けれども日本の危険の度合いは他の国よりはるかに高いので、今のままで十分かは、わかりません。それは敵の強さとの関わりですから。