「クジラは食べられる」と考えてもらえるか
長い空白期間と海外での保護運動の高まりで流通経路も減り、大手小売は鯨肉製品を店頭に置かなくなった。昭和34年生まれの私は小学校の給食で鯨の竜田揚げを食べた記憶がある。地域によっては給食で鯨肉を復活させる動きがあるものの、全国規模ではない。
商業捕鯨を再開したとはいえ、母船型捕鯨を手がけるのは共同船舶だけだ。水産大手が船団を南氷洋に繰り出した時とは規模が大きく違う。
共同船舶は2024年3月期まで2期連続で営業黒字を確保したが、25年3月期は既存販売先の伸び悩みや人手不足で営業赤字に。新型母船の減価償却負担ものしかかる。同社は新規顧客を開拓し、需要を回復させることが最重要課題だと考える。
水産庁は「商業捕鯨の存在意義は食料の安全保障、安定確保というより地域の食文化や多様性を守るという意味が大きい」(槇隆人捕鯨室長)という。日本捕鯨協会の山村顧問も「多くの日本人にクジラは食べられるものと考えてもらうことが第一の目標だ」と話す。
商業捕鯨が再開して7年目の夏。新たな捕鯨の姿を探る試行錯誤が続く。