再開発計画が頓挫した中野サンプラザ(写真:三田 崇博/アフロ)

(植村 公一:インデックスグループ代表)

 ミュージシャンやアイドルなどのコンサート会場として長年、愛されてきた東京都中野区の「中野サンプラザ」。中野区のシンボル的な存在だったが、老朽化が進んだこともあり、2023年7月に閉館。その後は収容人数7000人の多目的ホールとオフィスや住宅を軸とした超高層ビルを建設する計画が進んでいた。

 そんな中野サンプラザの再開発計画が事実上、頓挫したのは今年3月のこと。当初の事業費は1810億円の見込みだったが、工事費の高騰によって事業費は増加。最終的に当初見込みの2倍近い3500億円あまりに膨らむ恐れが出てきたため、中野区と野村不動産を代表とするグループは見直しの協議を進めていた。

 ところが、野村不動産が提示した見直し案は当初案とは大きく変更されており、この見直し案を採用すれば、入札に参加した他の事業者との公平性が担保できなくなる──。そう判断した中野区は、今回の枠組みでの再開発を断念する方針を固めた。

 再開発の中止を受けて中野サンプラザの再活用を求める声も挙がっていたようだが、2023年7月の閉館以降、敷地から湧く地下水をくみ出すためのポンプは止められており、建物の中は湿気でカビだらけになっているという。そのため、修繕による再活用は現実的ではない。

中野サンプラザ「傷みが進行、修繕は困難」 区長視察で(日経新聞)

 中野サンプラザの一件は広く報道されたため、ご存じの方も多いかもしれない。もっとも、中野サンプラザはあくまでも氷山の一角。計画の見直しや遅延、あるいは中止を余儀なくされた再開発プロジェクトは全国的に広がっている。

 例えば、東京・渋谷駅直結の高層複合施設「渋谷スクランブルスクエア」の2期工事がそうだ。

 東急電鉄、JR東日本、東京地下鉄の共同事業として開発が進められた「渋谷スクランブルスクエア」は東棟・中央棟・西棟の3棟で構成される。このうち東棟は2019年に開業しており、中央棟と西棟の完成も2027年度の予定だったが、2031年度に延期されている。街区全体の完成も、7年後の2034年度まで延びる予定だ。

渋谷駅再開発、完成7年遅れ スクランブルスクエア2棟の工事始まる(朝日新聞)

 この他にも、次ページの表にあるように、JR札幌駅直結の再開発プロジェクト「北5西1・西2」事業は6年の遅れ。京王電鉄が進めている新宿駅西南口地区の再開発計画は施工会社が決まらず、2028年という当初の工事完了時期は未定となっている。また、表には入れていないが、津田沼駅南口の再開発も一時中断になっている。

札幌駅前再開発、タワー棟34年度に完成延期 JR北海道(日経新聞)
京王電鉄、新宿再開発の工期未定に 施工会社決まらず(日経新聞)
津田沼駅南口地区における再開発(習志野市)

 この表にあるリストは報道などで表に出ているものだけで、延期や中止は他にも出てくるに違いない。