ところが、1995年にラビン首相が、イスラエルの右翼青年に暗殺された。その機に乗じて首相の座に就いたのが、「オスロ合意」を否定する強硬派のベンヤミン・ネタニヤフである。ネタニヤフは現在、3度目の首相に就いているが、この男の「盟友」として、強硬路線を一貫して支持し続けているのが、トランプなのだ。

2020年9月、ワシントンのホワイトハウスにて、UAEとの国交を正常化する「アブラハム合意」に署名したイスラエルのネタニヤフ首相と、米国のトランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)

 2023年10月から起こっているイスラエル・ハマス紛争も、根っこにはトランプが「オスロ合意」を否定していることがある。「パレスチナ人はガザ地区から出て行け」という姿勢だ。

イラン核合意も突然「離脱」

 ネタニヤフ&トランプがもう一つ否定しているのが、2015年の「イラン核合意」である。

 これは、2002年から足かけ13年もかけて、イランとアメリカ、それにロシアと中国、イギリスとフランスとドイツの計7カ国がまとめ上げたものだ。最後は米バラク・オバマ民主党政権が総力を挙げて妥結させた。この「イラン核合意」によって、イランの核開発を防止するシステムが完成した。

 ところがこれまた、1期目のトランプ大統領が、2018年5月に突然、「離脱する」と言ってちゃぶ台返しをしてしまったのだ。そればかりか、トランプはイランに対して経済制裁を科した。おそらくは深く考えもせずに、「盟友」ネタニヤフにそそのかされて行動したのだろう。

 それでもイランは丸1年、我慢強くトランプを説得しようとした。ところがトランプはイランに対して強硬になる一方だったので、2019年5月に、「それなら核開発を始める」となったのだ。

 このように、いま中東で起こっている混乱は、ドナルド・トランプが「元凶」なのである。