3.なぜ爆撃機等の破壊が必要だったのか 

(1)爆撃機からの巡航ミサイル攻撃を防ぎたかった 

 爆撃機Tu-95やTu-160は各種巡航ミサイルを発射する。

 巡航ミサイルは、時速約750キロで飛翔するため、目標から1500キロ離れていれば、飛翔時間が2時間かかる。2時間あれば、ウクライナは警告を発し避難するまでに十分な時間が取れる。

 また、単体で発射されれば撃墜も比較的容易だ。だが、他のミサイルや無人機と合わせて撃ち込まれれば、撃墜が困難になり、撃ち漏らしがあって、被害を受ける。

 そのため、ウクライナは、頻繁に発射される巡航ミサイル発射を止めたかったのである。 

図 爆撃機によるミサイル発射(イメージ) 

出典:各種情報を参考に筆者が作成 

(2)Tu-22爆撃機の高速空対地ミサイル攻撃には全く対処できなかった 

 爆撃機Tu-22は高速で飛行し、その勢いで高速の空対地ミサイルを発射する。

 ウクライナは、このミサイルをこれまで撃墜できていない。発射を阻止するには、この爆撃機を破壊するしかなかった。

 ウクライナはこれまで、無人機を使って駐機している爆撃機2機を破壊することができた。

 このため、ロシアは無人機攻撃を避けるため、ソルツィ基地からムルマンスク州オルネゴルスク基地に避難した。 

 オルネゴルスク基地のTu-22はこの基地から離陸し、ミサイルの射程まで接近し、高速ミサイルを発射している。

 ウクライナは、これまでこのミサイル攻撃を阻止することができなかった。そのため、最も破壊したかったのは、この爆撃機だったのである。 

(3)A-50早期警戒管制機の空中情報収集を阻止したかった 

 ウクライナは、米欧から供与された戦闘機を有効に運用するには、敵の早期警戒管制機や防空レーダーの目を潰しておくことが必要である。

 そこで、これまで長距離警戒監視レーダーや防空ミサイル用のレーダーを破壊してきた。 

 早期警戒管制機については、これまで2機破壊してきたが、まだ7機ほど残っている。

 ウクライナ正面に1機飛行しているだけでも、十分に脅威である。ウクライナは、なるべく多く撃墜したいと考えていたはずだ。 

 数が減少すれば、稼働が多くなり整備する機体の割合が増加する。部品が減れば、飛行にも制限がでてくる。整備で非稼働期間が増加する。

 ウクライナは、これからも、A-50早期警戒管制機を破壊できるように努力するだろう。 

(4)ロシア敗北イメージを世界に認識させたかった 

 ウクライナは、ロシア軍兵士約100万人を殺傷し、1万両を超える戦車、3万に近い門数の火砲を破壊してきた。

 これらは数字で表れるが、この数字は敗北のイメージとしては薄い。

 逆に、ロシアがウクライナの領土を占拠し、キーウ爆撃で建物が破壊され燃えている映像が流されれば、ロシアが優勢であるように見える。 

 ウクライナは今回の作戦で、ロシアの象徴が破壊され燃える映像を世界に流したかった。

 この広報を果たすのが、ロシアの大型爆撃機が大量に燃え、さらに、燃えて灰になった映像を流すことだったのだろう。

 ロシアが敗北しているイメージが、世界の人々の心に深く入り込んだ。