「スケボー」から中学生と考える「傾き」

 例えば、お茶碗やどんぶりのふちから、鉢の中にパチンコ玉などのボールを転がすことを考えてみます。

 ボールは椀などの中を転がりますが、いつかどこかで止まるでしょう・・・なぜ止まる?

 これはよく考えると難しい問題なのですが、ここでは深入りしません。何にしろ「底の部分」で動かなくなる。

「あたりまえじゃん」と思う子供が多いはずです。こんなふうに、生活世界で子供たちがすでに経験している事例に「取材」して、応用問題を考えるのが効果的です。

 では、どんぶりばちではなく、「スケボー」競技で使う巨大なコート、その斜面の「傾き」がどうなっているか分かる?

 こういう問いを中学生相手に尋ねることを考えましょう。

「スケボー」こと、2021年の東京五輪から公式競技に加えられた「スケートボード」ですが、まだ種目に加えられていない種目に「ヴァ―ト」があります。

 断崖絶壁みたいな(vertical=垂直)端点から飛び出すダイナミックな競技を音声動画などで見せると、何しろかっこいいですから子供の喰いつき度は高くなるでしょう。

 私は東海大学付属菅生高等学校中等部のAI教育プログラムを作っていますが、今年の秋学期は中2あたりにも以下のような教程を、私自身でも行う考えです。

 まず坂道の「傾き」から考えましょう。

 自転車を漕ぐとして、平たん道路と坂道の違いは誰でも分かります。「あそこの坂は急だから、ちょっと遠回りだけど、こっちから行った方が自転車なら楽だよ」なんて生活経験も、多くの子供が持っているでしょう。

 この「傾き」を数~データ的に扱うとどうなるか?

 今、1メートル進むと1メートル上昇する坂の傾きを

と約束するなら、

になるでしょうし、以下、上昇が3メートルなら傾き「3」、上昇100メートルなら傾き「100」になるはずです。

 問題は、スケボー「ヴァ―ト」競技のように「垂直」なとき、ここではいつまで経っても坂道では頂点に到達しませんから、

 こんなのを、上手く生徒の気を引きながら教えると、無限大で「すげー」などと歓声が上がることがあります。そこで、そんな授業になるよう引っ張っていくのが、教える側の一つの腕の見せ所になります。

 さて、ではスケボー「ヴァ―ト競技」のリンクのような「斜面」での傾きは、どうなっているのでしょう?

 曲面になっているから、単調な坂道のようにはいきません。ある一点の近くで、傾斜がどんなかを考える必要がありそうです。