ねじれ政権の下で進まなかったEU回帰
2023年12月に誕生したトゥスク首相率いるPO政権は、それまでのPiS政権の下で悪化したEUとの関係を修復しようと試みてきた。しかし、半大統領制を採用しているポーランドでは、大統領が議会で可決された法案を拒否できる権限を持つため、PiS出身のドゥダ大統領が、トゥスク首相の試みを阻んできたという経緯がある。
例えば、トゥスク首相は、PiS政権の下で進んだ司法制度改革の見直しに着手しようとしてきた。PiS政権は政権の意にそぐわない裁判官を罷免できるように司法制度を改革した。EUはこのPiS政権による司法制度改革が法の支配や民主主義の原則に反するとしてポーランドを非難、同国への資金配分を停止するなど関係が悪化していた。
そのため、トゥスク首相は2023年12月に政権を奪取してから、PiS政権が進めた司法制度改革を見直そうと取り組んできた。EUはそうした姿勢を評価し、2024年3月にはポーランド向けの資金配分が再開されることになった。一方で、ドゥダ大統領は、トゥスク首相が進めようとした見直しに大統領権限でブレーキをかけてきた。
かくしてポーランドは“決められない政治”に陥ったわけだが、この事態を招いた責任は、性急なEU回帰を模索したトゥスク首相にもある。今回の大統領選でチャフコフスキ氏が当選していればこうした状況の打破が期待できたわけだが、ナヴロツキ氏が新大統領に就任することで、ポーランドでは決められない状況が続くことになる。