「製造業の大国」から「製造業の強国」へ

 強い国は強い製造業を持っていなければならない――。

 これは10年前、当時の中国の李克強首相が「中国製造2025」をスタートさせた時に北京から発したメッセージだ。

 この計画について当局が出した通知書の序文には、「世界の強国の興亡、中華民族の奮闘の歴史は『強い製造業なしには国家と民族の繁栄もない』ことを物語っている」と書かれていた。

 北京交通大学国家経済安全研究院の李孟剛院長によれば、この計画の目的は中国を「製造業の大国」から「製造業の強国」に変身させることにあった。

 この計画は、それ以前の産業政策プログラムより包括的だっただけでなく、市場シェアや国内自給率、技術開発について詳細な目標を定めてもいた。

 そして、中国のような共産党主導の権威主義的な国家で比較的利用しやすいツールを多数結集させる戦略を採用した。

 選抜した産業を支援するために、国家の誘導基金が800近く立ち上げられ、その総額は2017年までに2兆2000億元に達した。

 ロジウム・グループによれば、イノベーション(技術革新)のための税制優遇措置は2018年~22年に平均28.8%(年率)のペースで拡大され、税務上の控除の追加や税額の減額といった恩恵を受ける企業の割合も2015年から2023年にかけて4倍以上に拡大した。

 政府誘導基金を通じた国家の投資は2015年から2020年にかけて5倍以上に増加した。

 中国企業は、外国の技術を取り入れるための外国企業の買収でも国家の支援を受けられた。

 また情報通信、航空、スマート・マニュファクチャリングの分野で国を代表する企業を作るために国有企業の統合が進められる一方、イノベーションの潜在力がある小企業は政府から手厚い資金援助を受けられた。