イノベーションの大半は民間部門
外国企業は中国市場へのアクセスを制限され、中国企業との合弁会社設立を強いられた。
自動車製造、民間航空機製造、ITなどのセクターでは技術移転も求められた。
EU商工会議所の報告書には「外国企業は、中国が中国製造2025の目標を達成するのに役立っている」という記述がある。
最も成功したのは多額の資本が必要な分野だった。
中国企業は、国家が牛耳る銀行システムを通じて大量の資金にアクセスできたからだ。
また、中国の巨大な市場から恩恵を享受できる産業でも計画は大きな成功を収めた。民間企業の参加が促されたことで競争が刺激された。
「中国のイノベーションの大半は民間セクターでなされていると思う」とランド研究所のディピッポ氏は話す。
外国企業は中国国内で生産を行うことが奨励されており、これも外国企業を国内のサプライチェーンに埋め込もうとする政府の目標達成に役立った。
ロジウムの調査によれば、米国から中国への輸出が落ち込んだ時でも、中国にある米国企業子会社の売上高は伸び続けているという。
ロジウムの報告書の共著者であるカミーユ・ブルノワ氏は「中国は輸入依存度の引き下げでは大成功を収めているが、外国企業への依存度引き下げにおいてはそれほどでもない」と指摘する。
だが、中国に進出した外国企業の多くは輸出ではなく現地生産を行っており、「ある意味で、あの計画が成功したのはそういう外国企業によるところがかなり大きい」と話す。
産業ごとの成功度合いを評価すると・・・
ロジウムの報告書は「中国製造2025」で選抜されたセクターそれぞれについて、どの程度成功したかを4つの面から評価している。
輸入依存度の引き下げ、外国企業への依存度の引き下げ、技術面で有力な企業になること、そして世界的な競争力の獲得だ。
それによると、4つの面すべてで高評価を得たのは、この計画における10の重点分野のうち2分野――先端的鉄道設備と電力設備――だけだ。
高評価の面と「強弱まちまち」の面があったのは工作機械・ロボット、農業用機材、EVなど5分野で、新素材、航空・宇宙設備、バイオ医薬・高性能医療機械の3分野には強弱まちまちの面と低評価の面があったという
だが、その内訳を見ていくと、産業平均から大きく外れたカテゴリーがあることも分かる。
後編「国内自給の目標は道半ば、膨大なムダにもかかわらず『製造業超大国』に向かって猛進」に続く