(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年5月22日付)

金融市場における米国例外主義が奇妙な夢のように感じ始めている。
2024年末には、あらゆる投資家がもっぱら、この例外主義のことしか語らなかった。
より速い経済成長を実現する決意を固めた新大統領とビッグテックにおける米国の優位性に支えられ、米国株がその他世界より素早い上昇を続け、差を広げるのは絶対確実だと見られていた。
米国例外主義の時代の終わりか
あれから5カ月経った今、このナラティブ(物語)は崩れ落ちた。
米S&P500種株価指数は4月の急落から個人投資家主導で急激に持ち直した後、年初から辛うじて上昇している程度だ。
一方、欧州の株価指数は米国を突き放し、イタリアとドイツは20%以上、ポーランドはそれ以上の大幅高を演じている。米国株を除外したグローバルファンドが人気を集めている。
米国例外主義の時代が終わったかもしれないことを受け入れるのは難しいプロセスだった。
米ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのクライアントセールス部門を率いるマット・ギブソン氏は「我々のクライアントは過去5年間で世界の状態にすっかり慣れた」と言う。
「米国は長い間、(売買で儲かる)良い投資先だった。今、これが一巡したのかどうかという質問が顧客から殺到している。誰もがこれについて考えている。なかには行動している人もいる」
「行動」はいくつかのことを意味する。
一部の投資家は、米国株が再び急落した場合に利益を得られるヘッジ戦略を採用している。
同様に、さえない米国株によるダメージを増幅するドル安進行から身を守っている投資家もいる。
筆者が最近話をする投資家は皆、米国への投資比率を引き下げるために今後数年で他国・地域への投資を増やすことを少なくとも検討している。
投資家の記憶に偏り、バブルではないかもしれないが・・・
これはすべて結構なことだ。賢明なリスク管理だ。だが、我々がいかにして今の局面を迎えたか少し問うことに価値があるだろう。
ヘッジファンドのAQRのアンティ・イルマネン、トーマス・マローニー両氏の新たな論文は、この概念はずっと現実より希望に基づいていたと示唆している。
米国例外主義は何年も自己増殖し、投資家がこれを自然の法則として扱うほどになった。
注意を喚起したり、全世界でより均等に賭けを分散したりする人は、繰り返し間違っていたことが証明された。
ここでBワードを使う人もいるかもしれない。つまり、バブルだ。愛想のよいデータ専門家のイルマネン氏自身はもっと慎重だ。
だが、同氏の言葉では「(米国の)アウトパフォーマンスほぼすべてがバリュエーション(投資評価)の変化から生じた。経済成長のアドバンテージがあったが、それは他の要因によって相殺された。市場は昔のことを覚えておらず、永遠に今の状況が続くと思い込む」。
論文が概要を描いたように、米国市場は1990年代と2024年までの15年間に世界全体を大きく引き離した。
投資家の脳裏に焼き付いたのはその時期であり、2000年代や1980年代、1970年代のアンダーパフォーマンスの時期のことは記憶に残らなかった。