(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年5月14日付)

トランプ大統領に贈られることになったカタールが保有する「B747-8」(写真は2月15日フロリダ州のパームビーチ空港に向けて離陸準備中の同機、写真:ロイター/アフロ)

 すでに何もかも持っている人物には何をプレゼントすればよいのか。そう尋ねられたら、相手の郷愁を誘うものがいいと答えるのが普通だろう。

 ドナルド・トランプの場合、カタールはまさに完璧な組み合わせを見つけた。トランプが郷愁を感じると事前に示唆していたジャンボジェット1機(4億ドル相当)がそれだ。

 トランプは大統領就任の宣誓を行った数週間後に、この飛行機をフロリダ州のパームビーチ空港で視察した。

 機内に金メッキを施した後は、この次世代エアフォースワン(大統領専用機)とカタールの支配者一族を長きにわたって結びつけて考えるようになるだろう。いや、同一族はそう望んでいるに違いない。

ジェット機だけではない驚きの利益相反

 実を言えば、トランプが抱く感謝の念は長持ちしない。

 フェイスブックを運営するメタのマーク・ザッカーバーグに聞けば分かる。

 彼はトランプの大統領就任時に100万ドルを寄付したり、トランプがメタを相手に確たる根拠もなく起こしていた名誉毀損訴訟を終わらせるために2500万ドルの和解金を支払ったりしたが、それでもメタが巨額の罰金を免れることはなかった。

 しかし、トランプについては「絶対にない」という言葉は絶対に使うべきではない。

 ひょっとしたらザッカーバーグも、メタがトランプの反トラスト法担当弁護士から逃れることができたという安心感を手に入れるかもしれない。

 大統領2期目の最初の外遊先が1期目と同様にサウジアラビアやそのほかのペルシャ湾岸諸国であるのは、偶然でも何でもない。

(フランシスコ教皇の葬儀に参列する先日のローマ訪問が急遽設定されたことは明らかだ)

 サウジアラビアを治めるサウド家にとって、公私の区別はほとんど意味がない。何しろ、国名自体がサウド家にちなんだものだ。

 少なくとも理屈の上では、利益相反を禁じる倫理法がある米国の政権は、サウジアラビアの政権とは対極にある。

 実際問題としては、米国連邦政府の倫理規程はお飾りでしかない。