株価高騰を成長主導の優位性と混同

 我々が好況期について自分自身に言い聞かせた物語は、米国の比類なき起業家文化、市場に優しい制度機構、力強い経済成長の見通しを軸として展開された。

 確かに、米国企業の収益は素晴らしかった。だが、バリュエーションはそれ以上に素晴らしかった。

 ここへ勝ち組企業に大きく偏ったベンチマークにしがみつく、インデックス型の投資家の果てしない台頭を加えてみてほしい。

 そのうえで、同じビッグテック銘柄に手厚く報いるアクティブ型の投資家を加える。さらに、ここへモメンタムを加える。

 投資家は勝者を好み、すでに上昇してきた銘柄に報いる傾向があり、米国の株高が強いドルによって一段と後押しされることになる。

 こうした要因すべてがファンダメンタルズを凌駕する独自の勢力を形成し、昨年末には米国のビッグテック企業の株式時価総額を欧州市場全体のそれを上回る水準まで押し上げた。

 1980年代後半には米国のバリュエーションは残りの世界の半分程度だったが、昨年末にはほぼ2倍に達していた。

「投資家は2025年に歴史的に極端に高い米国の相対的バリュエーションについて心配すべきなのか。答えはイエスだ」と論文は指摘している。

 特に重要なのは、イルマネン氏は投資家が高騰した株価を「成長主導」の優位性と「混同した」と考えていることだ。

米国のAI支配に対する中国の挑戦も影響

 市場のパフォーマンスに今はっきり見て取れる転換点は結局、一時的な現象で終わるかもしれないが、このリスクを一蹴するのは慢心であり、傲慢でさえある。

 このリスクは今ホワイトハウスから放たれている経済政策のカオス(混沌)と制度機構への攻撃だけでなく、米国の人工知能(AI)支配に対する中国の挑戦のインパクトからも生じている。

 後者は今年1月の中国製AI「ディープシーク」の公開で明らかになったが、その影響は見落とされがちだ。

 米国のビッグテックを守るモート(堀)は広くも深くもなく、「新しいパラダイム」のナラティブが想定していたほどサメだらけでもなかった。

「人がこの証拠から何を読み取るかは、長期的なパターンに対して最近の実体験をどれほど重視するか、あるいは統計に対して物語をどれほど重視するかに左右される」とAQRの論文は指摘している。

 もう何年も物語が勝利してきたが、いきなり高まったリスク管理意欲とファンドマネジャーによる監視の目の強化は、米国例外主義フィーバーが陰り始めたことを示唆している。

By Katie Martin
 
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