世界金融危機のリスクは真剣に受け止めよ
そう考えると、トランプが真っ当な経済政策との戦争を始めたりやめたりするという気まぐれな展開がまだ続くことになりそうだ。
市場は今、現状を非常にポジティブにとらえている。
トランプが崖っぷちから退けば――たとえば関税を停止したり、米連邦準備理事会(FRB)議長のジェイ・パウエルを解任しないと約束したりすれば――市場はそのたびに安心感から上昇する。
人格を持たない市場の力でさえ、自傷行為は異常だという見方に傾いている。
経済の現実に逆らおうとした米国大統領を探そうとするなら、1930年代初めのハーバート・フーバーまでさかのぼらねばならない。
ある意味で、トランプは近年の共和党大統領に似ている。減税はよいことだと思っているのだ。
目新しいのは、米国の信用力に対する信頼についてトランプが不吉な前兆をもたらしていることだ。
ワシントンで赤字を垂れ流す一方で、この人物は暗号資産や人工知能(AI)を、そして銀行業もある程度、野放しの状態にしている。
米ドルが基軸通貨の座を早々に追われる事態を予測するのは、さすがに大げさだろう。
その一方で、グローバル金融危機が起きる条件には真剣に対応する必要がある。
(文中敬称略)