トヨタと協業模索、個人所有も視野
ウェイモは事業拡大戦略の一環として、パートナーシップを重視している。これまで、ウーバー、マグナ、韓国・現代自動車、中国・浙江吉利控股集団(吉利グループ)、英ジャガーランドローバー(JLR)グループなどと提携関係を築いてきた。それに加え、4月29日には新たな動きがあった。トヨタ自動車およびトヨタの研究開発子会社ウーブン・バイ・トヨタ(東京・中央)と、自動運転技術の開発・社会実装を加速するための協業検討を開始する基本合意に至ったと明らかにした。
トヨタとの提携では、両社の強みを生かした新たな自動運転車プラットフォームの開発や、ウェイモの自動運転技術とトヨタの車両開発ノウハウを持ち寄り、次世代の「個人所有車(POV)」を強化する方法を探るとしている。これは、グーグルのスンダー・ピチャイCEO(最高経営責任者)が先の決算発表会見で言及した、ウェイモ技術を搭載した車両の「将来的な個人所有の選択肢」という構想とも合致する。ピチャイCEOは「我々だけですべてを行うことは到底できない」と述べ、配車サービスにとどまらない、多様なビジネスモデルとパートナー戦略の可能性を示唆した。
LiDAR戦略で先行、コスト・競争課題に直面
自動運転分野では、テスラがカメラベースのAI(人工知能)システムでコストを抑え、6月末までにオースティンでロボタクシーサービスを開始すると表明するなど、競争が激化している。テスラのイーロン・マスクCEOは、LiDAR(レーザーレーダー)などを多用するウェイモのアプローチを「非常に高価」で「少量生産」だと批判する。
一方、ウェイモはLiDARなど複数のセンサーを活用してシステムの冗長性を高め、安全性を追求するアプローチを続けている。その結果、実際の公道で豊富な無人運行実績を積み重ねている。ウェイモが2024年2月に公表したリポートによると、同社の自動運転システムは人間の運転と比較して人身事故に至る衝突の発生率が85%低いとされ、その安全実績で先行している。
2023年に人身事故を起こし、大規模な事業停止に追い込まれたGMクルーズの事例も、ウェイモの慎重かつ着実な事業展開の重要性を裏付けていると言えそうだ ほかにも、米アマゾン・ドット・コム傘下の米ズークス(Zoox)、イスラエルのモービルアイ(Mobileye)、米スタートアップのメイ・モビリティー(May Mobility)、中国の文遠知行(ウィーライド)や百度(バイドゥ)のApollo Go(アポロゴー)などが競合として存在する。
ウェイモは技術的リーダーシップと安全実績を基盤に、生産能力の増強、サービス提供地域の拡大、そしてトヨタとの提携検討による新たな事業領域の開拓と、多方面でアクセルを踏み込む。今後は、事業規模拡大に伴うコスト効率の改善、激化する競争への対応、そして配車サービスに続く持続可能なビジネスモデルの確立が課題となる。
マワカナ共同CEOは、ウェイモがまだ黒字化していないことを認めつつも「収益化への道筋はある」と述べ、事業の持続可能性構築に注力する姿勢を示している。早期の事業採算性確保もまた、重要な焦点となっている。「交通事故ゼロ社会」と「全ての人への移動の自由」の実現に向け、その動向が注目されることになる。
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