2024年LAオートショーで発表されたロボタクシー「Cybercab」(写真:ロイター/アフロ)

 米電気自動車(EV)大手テスラを率いる起業家イーロン・マスク氏は、このほど投資家に対し、2025年6月までに米南部テキサス州オースティンで有料の自動運転配車サービス、いわゆるロボタクシーサービスを展開する予定だと語った。だが、一部の専門家はこの発言に懐疑的な見方をしている。専門家らは、自動運転に関するテスラの実績が不足しており、マスク氏がこれまで非現実的な約束をしてきたと指摘している。

マスク氏の曖昧な発言、投資家が不安視

 英ロイター通信によると、マスク氏は1月下旬に開いたテスラの決算説明会で投資家に対し「6月にオースティンで有料の自動運転配車サービスを開始する」と述べた。ただ、車両の台数や顧客がそれらにアクセスする方法、また、サービスが全ての人に利用可能かどうかについては言及しなかった。

 加えて、現在テスラ車に搭載している高度運転支援システム「フルセルフドライビング(FSD)」について、米西部カリフォルニア州などの米国内の多くの地域で「無人」でも利用できるようになるとし、その時期は2025年中だと説明した。だが、それがロボタクシーサービスなのか、テスラ車のオーナーが有料利用できる新機能なのか、あるいは他のサービスなのかについては説明しなかった。

 マスク氏のこうした曖昧な発言が投資家を不安にさせているとロイター通信は報じている。テスラがいつ、どのような規模で、どのようなビジネスモデルで、完全自動運転技術を最終的に展開するのかが分からないからだという。

 これに加え、テスラには自動運転試験走行の実績が不足しているとも指摘されている。米西部カリフォルニア州の記録によると、テスラは2016年以降わずか900キロメートルのテスト走行しかしておらず、2019年以降、州規制当局に報告書を提出していない。

グーグル系ウェイモのテスト走行、テスラの2万3000倍

 一方、米グーグル系の米ウェイモは2100万キロメートル以上のテスト走行を行った。テスラの2万3000倍である。ウェイモは2014年から2023年にかけて7つの認可を取得。2023年にはロボタクシーで乗車料金を徴収できる認可を得た。

 ロイター通信によると、テスラは現在、カリフォルニア州で最も低いレベルの許可しか持っていない。これは人間のセイフティードライバー(安全乗務員)による監視下でテスト走行が許されるものだ。

 これに対し、すでに無人のテスト走行許可を取得した他の6社は、その許可を取得する前に少なくとも3年間、数百万キロメートルにわたるドライバー乗車のテスト走行を行っていた。例えば、米アマゾン・ドット・コム傘下の米ズークス(Zoox)は3年間で260万キロメートル以上の、米ゼネラル・モーターズ(GM)傘下の米GMクルーズは5年間で340万キロメートル以上の走行実績がある。なお、GMは2024年12月、競争激化や事業拡大に多大なコストがかかることを理由に、ロボタクシー事業から撤退すると発表した。