景気不安を映し出す「ドクター・カッパー」の不振
25年4月の分野別の動きを見ると、非鉄金属が前年同期比で12.1%と大きく下落し、鋼材が3.8%、石油化学製品も2.6%値下がりした。食品が7.4%も下落したことに違和感を覚える読者が多いかもしれないが、42種を構成する食品は大豆と大豆油、砂糖であり、大豆はウクライナ危機時の高値が修正されたところへ米中の関税応酬が追い打ちをかけた。
銅相場が世界経済を診断する「ドクター・カッパー」と呼ばれるように、非鉄金属相場は中国を中心にした景気不安が重荷になっている。国際銅研究会(ICSG)が4月28日に公表した今年の需給見通しは需要鈍化で28万9000トンの供給過剰を見込む。
一時1バレル(約159リットル)55ドル台と4年ぶりの安値に下げた米原油先物の下落も需要鈍化とサウジアラビアなどの増産が背景にある。
エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の野神隆之首席エコノミストが国際エネルギー機関(IEA)のデータをもとに集計したところ、世界の石油需給は今年10〜12月期に日量190万バレルの供給過剰になる見通しだ。通年で14万バレルの供給不足だった24年から状況は一変する。
国内円建て取引価格で算出する日経商品指数は、こうした国際市場の変化に為替相場や国内の需給動向が加味される。鋼材価格の動向はその典型だ。
H形鋼などの鋼材値下がりには慢性的な人手不足で工事量を絞らざるを得ないゼネコン(総合建設会社)の事情も影響している。日本鉄鋼連盟の集計で3月の鋼材(普通鋼と特殊鋼)輸入量は前年同月比4.6%減の43万トンと2カ月連続で減少した。ただ、過剰生産が続く中国からの輸入量は15.6%増と7カ月連続で増えている。
日経商品指数の鋼材価格は「店売り」と呼ばれる流通市場の価格だ。店売り価格は需給の調整弁となり、景気の変化が表れやすい。原油のスポット市場も同じだ。鉄鋼大手は輸入鋼材の増加や国内景気の減速で需要家などとの「ひも付き」価格に下げ圧力が強まることを懸念する。