日本の国会は何のためにあるのか?
中林:日本の政治は、スキャンダル追及に特化した委員会を作らない場合が多いです。加えて、日本の国会は議論をする場所という側面が強く、アメリカほどには与野党が一緒になって法律を作る場所になっていません。
そうすると、テレビカメラが入っているところで鋭い質問をして、抜けている部分や矛盾している部分を批判することが野党の仕事になる。逆に言えば、法案修正など実質的な立法に参画できないなら、それ以外のところ(議論を国民に見せること)が野党の活躍の見せどころとなるケースが多いということです。
これに対して、アメリカの場合は、野党も法案を作る際に自分たちの修正案を付けることで大活躍できます。
フィリバスター(※)というルールがある上院で通常の法案や予算を通すには、特に与野党の協力が必要となります。投票するときにも個人の名前がすべて公開されますから、誰がどの法案に対していかに投票したのかがすべて分かります。
※フィリバスター:議事妨害。米連邦議会の上院において、演説を長時間続けて議事進行をさまたげる行為のこと。回避するには60票が必要になる。
政党ごとに投票するわけではなく、各議員が自分の立ち位置をしっかり示すことができます。予算編成も議員(および議会官僚)が行いますが、中の数字をどれぐらい変えるかで、実力を示すことができます。
アメリカの政治では、スキャンダル追及は別個に調査委員会を設けて、証人を呼んだり、さまざまな調査をしたりしながら、そこでその話を専門に追及します。日本のように、予算委員会でスキャンダル追及が行われる必要がないのです。
──アメリカの議員たちのほうが実務をしているように聞こえます。
中林:それは何をするための議会なのかというコンセンサスの違いだと思います。
「(予算を含む)法律を作る権限は議会だけが持つ」とアメリカの場合は憲法の最初に明記されています。それに対して、日本では最終的に法律を通過させるのは国会ですが、予算は一般の法律という扱いになっていません。
また、予算案を作るのは行政府で、それを内閣が承認してから国会に出します。内閣は政権与党ですから、多数決を取ったら与党が勝ちます。
つまり、法案自体が国会で作られるというしつらえになっていないのです。これは議院内閣制の特徴かもしれません。
それでは、日本の国会はいったい何のためにあるのかというと、アリーナ議会(劇場型議会)という区分があります。今、何が話し合われるべきなのか。何を明らかにするとどう見えるのか。そのようなことを議論の中で明らかにする責務を負っている議会なのです。
日本の国会議員が仕事をしていないとは言えません。国民が議会に対して何を求めるのかの違いなのです。