「化け物」すら逃げ出す
■落語『化け物使い』のあらすじ
人使いのべらぼうに荒いご隠居のもと、3年も辛抱した権助が、この度引っ越しするにあたり突然辞めると言い出す。理由は新しい引っ越し先が「化け物屋敷」だったからだった。
一人暮らしになってしまったご隠居。引っ越し先で暮らし始めてみると、いきなり背筋がゾクゾク寒くなってくる。一つ目小僧の登場だ。
ご隠居は全く驚かず、たくさんの用を言いつける。洗い物、片付けさせ、掃除、布団敷き、肩を叩かせながら、明日はもっと早い時間に来てくれなどと言う。
次の夜は、大入道が出てきた。ひるむどころか、力仕事までさせる。庭の石灯篭の移動などなど。
翌日の晩には、のっぺらぼうの女が出て来た。食事の準備、針仕事などなどをたっぷりやらせる。「明日も来てくれ」とまで言い伝えた。
その次の晩、今日は誰が来るのかと待っていると、出て来たのはタヌキだった。化け物に化けていたのはタヌキだったのだ。
タヌキは涙ぐみながら口を開いた。「お暇を頂きたく。こんなに化け物使いが荒いんじゃ、辛抱できません」
談志の十八番で、必ずマクラでは「俺は人使いが荒い」と宣言していたものでした。マルチタスクの談志は、原稿を書きながら雑誌のスクラップをしたり、食事を作りながら庭のツツジの手入れをしたり、その合間に知人に電話を入れて、間隙を縫うように映画の試写会に行くなどしていましたから、弟子に対する指示も山のようにありました。
さて、この落語が江戸時代から現代まで、多くの人々に受け入れられ、笑いとして消費されてきたのはなぜでしょうか。
単に「ゲゲゲの鬼太郎」よろしく奇想天外な化け物が登場してくる面白さからだけではないはずです。