2.短距離防空システムを遠隔操作する

 戦闘機を発見できる無人艇の目はどうなっているのか。

 無人艇は、全長が5.5メートル、幅1.5メートルの大きさであり、戦闘機を発見できる監視システムを搭載するには大きな制約がある。

 そのため、短距離防空兵器の監視システムの能力か、あるいはそれ以下の能力を搭載できるだけだ。

 その短距離の防空兵器が、敵の戦闘機などの目標の捜索を行う場合、3つの監視方法がある。

 敵機の位置が目視距離を越える場合の長距離捜索レーダーによる監視、目視距離内であれば兵士の光学機器を使った目視監視、兵士の目視監視がある。

 この3つのうち、無人艇に取り付けられるのはどれか。

 捜索レーダー装置を防空兵器に取り付けると、重量が重くなるので不可能である。トラック、装軌車には取り付け可能だ。

3.戦闘機撃墜を可能にする遠隔操作システム

 海上を移動する無人艇が、なぜ、戦闘機を撃墜できたのか。

 その理由は、無人艇と防空ミサイルの能力だけではない。衛星を使った遠隔操作ができたからである。

 そのシステムはどのようになっているのか。

 無人艇による防空監視と戦闘機等へのミサイル攻撃とその遠隔操作は、概ね以下の要領(図)で行う。

①無人艇がGPS誘導を受けて目標近海に侵入
②無人艇の光学防空監視装置が目標の戦闘機を確認
③確認映像を通信衛星を中継して、本国の防空指揮所に伝達
④防空指揮所が無人艇の監視装置を確認しつつ、目標に照準を合わせ射撃を指示
⑤防空ミサイルが戦闘機に向けてミサイル発射
⑥ミサイルは目標を赤外線誘導により自動追随
⑦ミサイルは、戦闘機等が放出するフレア(赤外線を追尾するミサイルが、火炎弾(フレア)を戦闘機が発する熱源であると認識させ、欺瞞するもの)にごまかされなければ、目標に命中する

②から⑦までの映像は、ウクライナ国防省情報総局から公開されている。

 この映像は、おそらくキーウ付近にある防空指揮所の遠隔操作の画面であると考えられる。

図 無人艇による防空監視と戦闘機等へのミサイル攻撃および遠隔操作

 この一連の動きは、無人艇を操縦する兵士と上空の航空機を監視しミサイルを発射する兵士の2人で行うことになる。

 戦闘機のパイロットが直接敵機を攻撃する場合の要領を、遠く離れた基地(ウクライナの場合は、おそらくキーウ付近の防空指揮所)にいて遠隔操作で行っているのである。

 この無人艇防空システムの射撃範囲は、光学機器を通して、兵士が見ていることから、人が見える範囲(5~10キロ)に限定される。