連立内閣をイスラエルと欧米が認めない
こうして、ガザ地区のハマース政権と、西岸地区のファタハ政権という分裂した体制ができ、2人の首相がいるという異常事態になりました。
国際的にはファタハ政権のみパレスチナ暫定自治政府として認められています。しかし国内的には、ハマースにしか選挙的正統性はありません。
そういう中で、ハマースとファタハは2007年、11年、14年と連立内閣を成立させました。イスラエルとの交渉を国際社会に認められているのはファタハだけれども、選挙的正統性はハマースにしかない。だから、その両者が連立するというのは、とてもよくわかる発想です。
しかし、連立が成立しても、ハマースが連立内閣のメンバーに入っている限り、イスラエル、欧米は政権として認めません。その度にイスラエルはガザ地区を爆撃しました。
2008年12月から09年の1月にかけての大規模な空爆と陸上侵攻で、およそ1500人が殺害されました。

2012年は8日間の攻撃があり、14年は非常に大きな攻撃で、およそ2200人が殺されています。14年は6月2日に連立の合意がされ、その一カ月後の7月8日にガザ攻撃が行われたので、連立政権に対する軍事的応答であることが明確です。
連立政権は「政治交渉しましょう」というアピールです。これがパレスチナの政治的なスタンスであるとメッセージを発しているのに対して、イスラエルの回答はガザへの空爆だということです。連立は西岸とガザ両方に関わるのに、ガザだけを空爆するのです。
連立内閣を作るたび、ガザ地区が空爆される
こうしたガザへの空爆と陸上侵攻が繰り返されているのは、2007年の内戦により、ガザ地区にハマースが封じ込められてからです。
ようするに、不都合なものをすべてハマースに背負わせて、ガザ地区という場所に封じ込め、大連立ができようものならガザ地区を封鎖し、空爆して、それを潰すということです。
もちろん、イスラエルは公には連立を潰すための空爆とは言いません。しかし、ガザ地区にはハマース以外に十数もの党派があり、その中にも分派があって、イスラエルに一矢報いたいという党派やその末端の活動家がいます。
封鎖状態に置かれて、いつでも攻撃をされる状況にある人たちを挑発し、パレスチナ側の停戦違反を誘発する状況をつくりだすことはやろうと思えばできます。実際に2008年の大規模攻撃の前には、イスラエル軍が挑発的な軍事攻撃を行っています。
ガザ地区のどこかの党派が挑発に乗れば、イスラエルはパレスチナの停戦違反を理由に、ガザ空爆を国際社会に向けて正当化することができるのです。
2007年から連立内閣を何度つくろうと、イスラエルによる大規模な攻撃が繰り返されて潰されてきました。こういうことが、2023年の〈10.7〉を生む要因になっていると思います。