(写真:AP/アフロ)

 半導体大手の米エヌビディア(NVIDIA)は2025年4月中旬、AI(人工知能)を駆動させるスーパーコンピューター(スパコン)を、製造パートナーと協力して初めて米国内で生産すると発表した

 米西部アリゾナ州で最新AI半導体「Blackwell(ブラックウェル)」の生産を開始し、南部テキサス州でスパコンの製造工場を建設する。今後4年間で最大5000億ドル(約72兆円)規模のAIインフラ製品を米国内で生産し、数十万人の雇用を創出するとしている。世界的に急増するAI需要に対応することに加え、トランプ米政権の製造業国内回帰の要求に応える狙いもある。

TSMC・鴻海などが協力、アリゾナ・テキサスで供給網構築

 エヌビディアは、生成AIブームを背景に需要が急増する同社製AI用半導体と、それを組み込んだAIスパコンの供給体制強化を急いでいる。

 今回の一連の計画では、以下の3つの施策を打ち出した。

 ①台湾積体電路製造(TSMC)がアリゾナ州フェニックスに持つ工場でBlackwellチップの生産を既に開始した。

 加えて、②電子機器受託製造サービス(EMS)台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)傘下の富士康科技集団(フォックスコン)とテキサス州ヒューストンで、③同じくEMS大手の台湾・緯創資通(ウィストロン)と同州ダラスで、それぞれAIスパコンの製造工場を建設中である。

 今後12〜15カ月後にこれら工場で量産を本格化させる計画で、そのための100万平方フィート(東京ドーム約2個分)の敷地を既に確保した。半導体製品の最終工程であるパッケージングとテストについては、米アムコー・テクノロジーや台湾・矽品精密工業(SPIL)とアリゾナの拠点で提携する。

 エヌビディアのジェンスン・ファンCEO(最高経営責任者)は、「世界のAIインフラを駆動するエンジンが、初めて米国で製造されることになる」とし、この施策の意義を強調。「米国内での製造を加えることで、AI半導体とスパコンに対する驚異的かつ増大し続ける需要により的確に対応し、サプライチェーンを強化し、当社のレジリエンス(強靱性)を高めることができる」と述べた。

 今後数十年にわたり米国内で数十万人の雇用を創出し、数兆ドル(数百兆円)規模の経済安全保障に貢献することも見込む。生産されるAIスパコンは、AI処理専用の新しいデータセンター「AIファクトリー」の中核となり、今後数年で数十カ所建設される見込みの「ギガワット級AIファクトリー」を支えるとする。

 協力企業との施設設計・運営には、製造自動化ロボットを構築する「NVIDIA Isaac GR00T」や、仮想空間に工場を再現する「NVIDIA Omniverse」など、先進的なAI、ロボティクス、デジタルツイン技術を活用する方針だ。