米国ばかりかユダヤ系米国人にとっても惨事
何十年間にもわたり、米国の大学は世界中から優秀な人材を米国へ呼び込んできた。
米国が世界の一流大学の大半の本拠地であることは、米国の最大の強みの一つだ。
大学制度を破壊することは、「米国を再び偉大に」することとは正反対だ。だが、トランプとその後継者たちが権力の座を固めることには役立つかもしれない。
学界に対する攻撃は米国にとっての悲劇であるだけでなく、ユダヤ系米国人にとっての潜在的な惨事でもある。
米国の一流大学はこうしたユダヤ系米国人に、安全な避難先と立身出世への道筋を与えてきたからだ。
ユダヤ人初の米最高裁判所判事になったルイス・ブランダイスはハーバード大から最高峰に上り詰めた。
ユダヤ難民として米国に渡り、最も影響力がある米国外交官の一人になったヘンリー・キッシンジャーもそうだ。
人口に占める割合と比較すると、ユダヤ人はアイビーリーグと称される名門私立大学で著しく学生数が多い。
バンスは保守的なカトリック教徒で、ユダヤ人を保護しなかったとしてハーバード大を提訴した国土安全保障省長官のクリスティ・ノームは福音派キリスト教徒だ。
一方、トランプ政権の要求を拒否する書簡に署名したハーバード大学長のアラン・ガーバーはユダヤ系だ。
心理学者のスティーブン・ピンカー、財務長官も務めたローレンス・サマーズ、政治学者のスティーブン・レビツキーをはじめ、ハーバード大の反撃の先頭に立っている著名学者の多くもユダヤ人だ。
政権の任務は「破壊」
反ユダヤ主義は確かに米国が抱える問題だ。だが、これは少なくとも左派と同程度に極右にも蔓延していると言えるはずだ。
大量移民を促したとしてユダヤ人を責める「グレート・リプレースメント(置き換え)理論」は、トランプを支持する右派の間で広く受け入れられている。
米国の一流大学も批判を免れない。
キャンセルカルチャーから学生の受け入れ方針に至るまで、多くのことについて間違った判断を下してきた。
だが、トランプ政権は好意的な助言を与えていない。政権は大学を破壊する任務を遂行しているのだ。
(文中敬称略)