オディロン・ルドン《神秘的な対話》 1896年頃 岐阜県美術館

(ライター、構成作家:川岸 徹)

独特な世界観が鑑賞者の心を惹きつける象徴主義の画家オディロン・ルドン。19世紀後半から20世紀初頭にかけて、伝統と革新の狭間で独自の表現を築き上げていくルドンの画業の全容を紹介する展覧会「PARALLEL MODE:オディロン・ルドン―光の夢、影の輝き」が東京・パナソニック汐留美術館で開幕した。

文化人や芸術家に好まれたルドン

オディロン・ルドン 《自画像》 1867年 オルセー美術館 ©️GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) /Hervé Lewandowski /distributed by AMF

 20世紀初めから日本人に深く愛され、今も新たなファンを増やし続けている画家オディロン・ルドン(1840-1916)。ルドンの名は洋画家・石井柏亭が1912年に『早稲田文学』に寄稿した文章に登場し、翌年の1913年には雑誌『白樺』にルドン単独の記事が掲載されている。執筆したのは記者S.Mで、これは武者小路実篤だと推察されている。

 ルドンの作品も数多く日本にもたらされた。梅原龍三郎、中川一政、岡鹿之助、須田国太郎、伊藤清永などの洋画家や、竹内栖鳳、土田麦僊といった日本画家が作品を所有。ほかにも多くの芸術家がルドンに夢中になり、漫画家・水木しげるは代表作『ゲゲゲの鬼太郎』の原型となる『墓場鬼太郎』の主要キャラクター「目玉おやじ」を着想する際に、ルドンの作品を参考にしたという。

 現在も日本国内にある数多くの美術館がルドンの作品を所蔵しているが、なかでも岐阜県美術館のルドンコレクションは総数250点以上。質・量ともに世界屈指といわれ、美術ファンの間では“ルドンの美術館”というイメージが定着している。

 そんな岐阜県美術館のルドンコレクションを中心に、国内外の名品を加えて、ルドンの画業の全容を紹介する展覧会「PARALLEL MODE:オディロン・ルドン―光の夢、影の輝き」。昨年、岐阜県美術館で開催され、その後、ひろしま美術館へ巡回。4月12日に東京・パナソニック汐留美術館で開幕した。

 展覧会の監修を務めた美術史家・東京都美術館館長の高橋明也氏は言う。「ルドンは印象派の巨匠クロード・モネと同じ年の生まれ。モネが常に明るい色彩で絵画を描いたのに対し、ルドンは黒一色の絵をはじめ、印象派の画家とは対照的ともいえる独自の表現方法を模索した。モネと同じ年齢ということを頭に置いて作品を鑑賞すると、ルドンの独自性をより深く感じることができるように思う」。