少子化対策は「いろいろ試せ」

石川:2015年から実施されていた住宅購入補助政策(CSOK)は、子ども1人の夫婦が新築物件を購入する場合、最大25万円ほど、3人以上の場合は最大約415万円の補助が受けられました。

 昨年からは、子どもの人数に応じて最大金利3%、最大約2000万円のローンを組める制度(CSOKプラス)に変更となり、融資額が引き上げられる一方で、母親の年齢制限が導入されるなど給付条件が厳しくなりましたが、住宅政策に政府が力を入れていることに変わりはないでしょう。

 ハンガリーの少子化政策として注目すべきは、住宅購入補助政策をはじめとして、子どもを3人以上持つことで優遇措置がかなり拡大していく政策が多いということです。ただ、私が分析したところによると、ハンガリーでは「3人以上産んでもらう」という政策に対しては、思うような結果を残せていません。

「多子世帯」自体はそれほど増えていないのです。その理由は夫婦のライフステージの問題なのか、先にお伝えしたインフレの問題なのかは分かりませんが、いずれにしても「広い家を用意したから」子どもが増える、というわけでもないのでしょう。

 一方で、ハンガリーの住宅補助政策が全くの無意味と断ずる訳にもいきません。実際日本の大都市の不動産購入価格は庶民では手の届かない水準になっています。空き家の有効利用や、普通の所得の人でも「家族が安心して暮らせる住居」に住めるような施策を打っていく必要はあるでしょう。

 ハンガリーはユニークな少子化対策を用意する国として知られていますが、その全てが成功しているわけではありません。例えば最大103万円を補助する「マイカー購入支援」などは3年で中止しています。それでも、多種多様な政策を組み合わせることで、子どもを増やす努力をしていることも事実。

 日本もすでに少子化は「有事」と化しており、悠長に構えている余裕はありません。多少の失敗は織り込み済みとして、思い切ってさまざまなアイデアを考え、実行すべきタイミングだと思います。