裁判官は口先の謝罪に惑わされないで

 そもそも本件は、不正改造を行った車の所有者にもかなり問題があると感じています。公道を走る車に任意保険をかけていないというのもあまりに非常識です。また、事故後の費用に関してこちらから実費を数回に分けて請求してきましたが、今のところ返信すらなく、無視の状態が続いているのです。

 田中被告の供述調書の中には、「誠意をもって支払いたい」「できる限りの賠償をしていきたい」といった内容の文言が書かれていました。にもかかわらず、このような不誠実な対応を取り続けているという現実に、怒りを感じずにはいられません。被告が取り調べの時に発した言葉が真実か否か、裁判官にはしっかり確認してほしいと強く思います。

 事故当時、私たち家族が住んでいた家は、娘が生まれてそれまで住んでいた家が手狭になってしまうと思い、新しく建てたばかりでした。しかし、私たち家族にとって、事故の記憶が残り、幼稚園や小学校に通う際にも事故現場を通らなければならない家に住み続けるのはあまりにも辛く、事故以降、自宅に住むこともできなくなり、数十キロ離れた場所に転居を余儀なくされました。

 上の娘は転校させたため、生活環境が大きく変わることになりました。また、住むことができなくても、住宅ローンの支払いは、当然続けなければなりません。

 私たちはあの日から、精神的にも経済的にも大きな負担を強いられています。娘を病院で一人にしないために、少しでも早く自宅で看護できる体制を整えたいと思っていますが、非常に多くの困難を抱えており、思うように進まないというのが現状です。

「賠償のためなら何でもします」「被害者に泣き寝入りさせません」と言った被告のあの言葉が、口先で終わらないよう、そして、間違ってもそうした言葉が、実行もされていないのに減刑の理由になるようなことだけはないよう、裁判官には私たち家族が置かれている現状、これからも一生続いていく精神的・経済的な苦しみ、被告人の悪質さを考慮していただいた上で、司法の場において、正しく重い刑罰を科してほしいと強く願っています。

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 不正改造、その上、任意保険未加入という車が引き起こした今回の重大事故。一生涯寝たきりで、要介護生活を強いられることになった幼い女の子とそのご家族の心労の大きさ、そして経済的な不安は想像を絶するものがあります。

 被害者は加害者を選ぶことができません。こうした無保険車事故から被害者とその家族を救済するためには、自賠責保険を無制限化する、もしくは、自賠責未加入の事故の被害者を救済する政府保障事業のような、何らかの救済策を検討すべきではないでしょうか。

 4月24日、札幌地裁で下される刑事判決に注目したいと思います。