対立した「株主の正義」と「美術館の正義」
国際文化会館の新西館に作られる新ロスコ・ルームの設計は金沢21世紀美術館や香川県立アリーナなどを手掛けた妹島和世氏と西沢立衛氏による建築家ユニットSANAAが行い、DICと国際文化会館が共同で運営する。国際文化会館との協業により、DICが負担する美術館の運営管理費は半分程度に圧縮される見込みだという。
DICは美術館事業継続の意義を「当社による美術館の継続的な運営が社会から強く求められ、長年にわたる当社の美術館の運営による芸術・美術分野への社会貢献活動が社会から高く評価され、当社のブランド価値や企業価値といった社会的価値を一層向上させるとともに、当社のアイデンティティの一部を形成している」とし、「美術館を保有資産という観点から見た場合、 特に資本効率という側面においては必ずしも有効活用されていないことから、運営の縮小又は中止によって得られる経済的価値という観点からの検討が必要であると考えた」と縮小移転までの経緯を説明している。
株主総会を巡る騒動は、一応は一段落した。とはいえ、DICには、美術館運営を通じていかに株主を含めたステークホルダーを納得させるだけの企業価値を創出していけるかという重い課題が残る。「株主の正義」と「美術館の正義」の対立は、今後の企業による美術品購入にも一石を投じることになりそうだ。