
(山﨑 友也:鉄道写真家)
オススメは奈半利駅発の「雄飛の抄」
JR四国の観光列車は「ものがたり列車」と呼ばれ、現在3種類の列車が走っている。四国の美しい車窓を眺めながら地元の食事を楽しみ、その土地ならではの歴史や風土を物語るという趣旨で、2014年7月に「伊予灘ものがたり」が予讃線にデビューした。人気は瞬く間に広がり、2017年には土讃線を走る「四国まんなか千年ものがたり」が運転され、2020年春には3本目の「志国土佐 時代(トキ)の夜明けのものがたり」がつくられた。
今年で5周年を迎えるこの列車は土休日を中心に高知県のJR土讃線を走っているが、期間限定ではあるものの第三セクターであるごめん・なはり線でも運行されているのが特徴だ。次回は4月4日~6月27日までの毎週金曜日に、高知駅~奈半利駅間で合計13日間運転される。

車両は2両編成で、デザインは文明開化ロマンティシズムをコンセプトとしており、幕末の歴史を象徴する「クロフネ」と、龍馬たちが水平の向こうに夢見た新しい時代の夜明けを連想させる「ソラフネ」とに分かれている。色使いがまったく異なっている斬新な外観で、車体いっぱいに坂本龍馬や太陽などが描かれており、インパクトも大。それぞれ蒸気船と宇宙船をモチーフやイメージした車内も機能美とファンタジーにあふれている。

列車はすべての座席がグリーン車の指定席のため、乗車するには乗車券のほか、特急券とグリーン車指定席券が必要だ。また高知駅発の便名は、ごめん・なはり線への新たな船出や航海していくようすをイメージして「煌海(きらめき)の抄」と名づけられているが、ボクのオススメは太平洋に沈む夕日を眺めることができる奈半利駅発の「雄飛の抄」。空の表情が刻一刻と変化する大海原での日没ショーを存分に楽しむには、AまたはB席を確保しておくと良いだろう。