頭のなかにあるものが伝わりやすい言葉になっているとは限らない(写真:ImageFlow/Shutterstock.com)

自分の考えが伝わりやすいようにどう言語化すればいいのか。苦手意識を持っている人が多いかもしれない。そんな言語化に悩む1000人以上の人たちと一緒に作り上げた簡単メソッド「言語化ノート術」を紹介するのが『こうやって頭のなかを言語化する。』(PHP研究所)だ。発売から2週間で2万部を売り上げるヒットとなった。

(東野 望:フリーライター)

言語化力が身につくと自分の考えを明確に伝えられる

 著者の荒木俊哉氏は、国内外20以上の広告賞で受賞歴のあるトップコピーライター。とはいえ、もともとは言葉のセンスや才能に自信があったわけではなく、悶々と過ごすダメライターだったという。

 必死に言語化や聞き方の工夫を重ねていくうちに、自分の言葉で魅力を語れるようになっていった荒木氏は、言語化力にはセンスなど関係なく、日々磨いていけば確実にレベルアップする能力だと主張する。

 言語化力がつくと、自信を持って自分の思いや意見を言葉にしたり、すぐに思考をまとめたりすることができる。コミュニケーションや判断がスムーズになり、効率的に仕事を進められるようになる。 そもそも、言語化力というと「話す力」「伝える力」「書く力」といったものを思い浮かべる。ではどれが大事なのか?

言語化に必要なのは「聞く力」

 荒木氏は、頭の中を言語化するためには「聞く力」が最も必要な能力だという。他人の話を聞く力だけでなく、自問自答して「自分で自分の話を聞く」姿勢が、自分の頭の中を言語化するのに必要不可欠だからだ。

 ところが、自分の声に耳を傾けることは意外と難しい。自分が考えたり感じたりしていることは、頭の中ではまだ「言葉」という形になっていないからだ。そこで意識したいのが、カウンセリングにも使われている聞き方のコツ。

 そのひとつは「できごと→感じたこと」の順番で自身へ問いかけていくというもの。これは自分に対しての問いかけの場合でも、他者に対する問いかけの場合でも有効なテクニックとなる。

 過去の印象的な「できごと」から聞いていき、そのできごとの中でどんな気持ちや感情になったのかを聞くと、思いや意見は言語化しやすくなる。また言葉一つひとつをとっても人によって言葉に込める意味が違うので、言葉の意味を深める問いかけをしてみることも聞き方のコツだ。

自分の話を聞いて、自分の「軸」をしっかり言語化することが、自分にとっての答えを見つけられる、いちばんの近道。
言語化力は、生きる力そのものだ。

 荒木氏によると言語化力する能力は、習慣にすることで誰でも身につけることができる。ただ、習慣化することは難しい…。

 そこでとにかく時間をかけずに、無理なく言語化を習慣化できるように設計されたのが言語化メソッド「言語化ノート術」だ。「言語化ノート術」は、「ためる」→「きく」→「まとめる」の3ステップで構成される。