20年越しの懸念が全国民に晒された

 その両方の現場=人質救援本部でも内閣広報室でも内側にたまたま一員として身を置いていた私は、記者会見はオープンたるべしと思いながらも、何らかの外的規制に代わる《自律》の仕組みができていかないと、将来の会見場は果てしない荒地になるな…と大きな不安を感じていた。

 20年越しのこの懸念が遂に全国民に晒されたのが、今回のフジの10時間会見だったのではないか。

 しかしその限界の現場で、何人かの真っ当なジャーナリストが、一部“記者”たちの言動に対して諌めるような発言をしたと聞く。これが、秩序ある真に自由な会見への《自律》の萌芽となるのか、注目し応援したい。

<後編に続く>
TBS「オウムビデオ問題」経験者として…今フジテレビ社員に伝えたいこと

下村 健一(しもむら・けんいち)氏 TBS報道局アナウンサーを15年務めた後、フリーキャスター10年。NPO「リカバリーサポートセンター」理事として、教材動画「性暴力被害に遭った人への急性期看護ケア」等の制作に参画。その後、内閣広報室審議官として、民主党・自民党の3政権にまたがり政府の情報発信の“伝わる化”に従事するも、3・11に遭遇、苦闘。東京大学客員助教授、慶應義塾大学特別招聘教授、関西大学特任教授などを経て、現在は白鴎大学特任教授。「令和メディア研究所」主宰として、小学教科書の執筆から企業研修まで、幅広い年代のメディアリテラシー教育に携わる。(写真:ATZSHI HIRATZKA)