また、今回の件がそうだと断じているのではないが、一般論として、性的事件の被害者の気持ちは大きく揺れ動くことがあり得る(もちろんその揺れ動き自体が被害の表れであり、本人の責任では全くないが)。自身を襲った事件の受け止め方自体が変転したり、内緒の相談相手に突然敵意を抱いてしまったり、といったことは一般論として起こり得る。

 だから、記者や「友人」が“ある一時点”でご本人から聞いた話を拙速に記事化して固定してしまうことは、ご本人や関係者を一つの流れの中に不自然に追い込んでしまうことにもなりかねない。今後も事件本体について続報を出すのなら、その表現にはもっともっと専門的配慮が求められる。

 今の日本社会の中で、文春砲の破壊力には私は基本的に敬意を抱いている。かつて取材でタッグを組んだこともある元同業者としては、これからの奮闘に期待もしている。だからこそ、砲弾がクラスター爆弾のように散らばって周辺にまでコラテラル・ダメージを与えないように、より謙虚に精度を上げていってほしいと願う。

オープン会見を荒らす“記者”たち

 それにしても、あの10時間を超すフジ幹部らの記者会見は、何だったんだろう。

 実数としては少数だったのだろうけれど、声高に演説したり、工夫の無い質問を繰り返したり、罵声を発したりする一部“記者”たち。その姿が延々と全国に生中継されたことで、「報道のヤツら、何様?」という反感を視聴者の人達に与えてしまったダメージは、大きい。真剣に臨もうとしていた多くの記者や視聴者を疲労困憊させ、パワーを削いだ罪も深い。

記者会見は午前2時23分まで続いた(表:共同通信社)