ロシア「影の船団」への制裁はどこまで効くのか

 昨年の11カ月平均では、中国のロシアからの輸入量は日量220万バレル(総輸入量の約20%)、インドは同176万バレル(総輸入量の約36%)だ。

 インドは3月まで取引を続ける構えだが、中国ではロシア産原油を敬遠する傾向が強まり、沖合にタンカーが滞留する事態が生まれている。

 中国とインドがロシア産以外の原油を調達する動きを見せていることから、大型原油タンカー(VLCC)の運賃も急上昇している。 

 国際エネルギー機関(IEA)は15日「(米英政府の制裁は)ロシアの原油供給網を大きく混乱させる可能性がある」との見方を示した。

 市場も強気ムードが支配的になっている。だが、筆者は「ロシア側が制裁を回避する新たな手法(第三国の仲介を通じた密輸や海上での積み替えなど)を見つけ出し、市場の混乱は比較的早期に沈静化するのではないか」と考えている。 

ロシアへの制裁強化は退任前のバイデン大統領の“置き土産”か(写真:UPI/アフロ)

 供給サイドとは異なり、需要サイドは弱含みの感が強い。

 石油輸出国機構(OPEC)は15日「世界の今年の原油需要は前年に比べて日量145万バレル増となる」との見通しを明らかにした。OPECはこのところ需要予測を下方修正しているが、IEAと比べて強気の姿勢を崩していない。IEAは「世界の今年の原油需要の伸びは日量105万バレルだ」と予測している。

 市場が注目している中国の昨年の原油輸入量は前年比24万バレル減の日量1104万バレルだった。前年割れはパンデミック期を除けば約20年ぶりのことだ。

 過去20年以上にわたって世界の原油需要を牽引してきた中国だが、今は昔だ。中国石油大手は「石油製品の需要は昨年にピークを迎え、今年から年平均2~3%のペースで減少する」と見込んでいる。

 OPECプラス(OPECとロシアなどの大産油国で構成)以外の産油国の生産が増加することから、IEAは「今年も供給過剰の状態が続く」と見ている。

 米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)も14日「今後2年間の原油価格は世界的な供給過剰が下げ圧力になる」との見解を示している。

 このような状況下でOPECプラスは板挟みの状態に置かれている。予定通り4月から増産に転じれば原油価格の下押し圧力になるが、現在の生産水準を維持しても原油価格が上がらなければ加盟国の財政は苦しくなる。