甲斐以外の大型補強は
キューバ出身のマルチネス投手は昨季のセーブ王。17年に中日に育成選手として入団すると、支配下登録された翌18年からクローザーとして頭角を現した。
最速160キロ超えのまっすぐと鋭く落ちるスプリットを武器に、通算303試合に登板し14勝18敗、166セーブ、防御率1.71。まだ28歳と若く、中日との3年契約が終わったオフは、残留を求める中日を含む複数球団による激しい争奪戦が繰り広げられ、巨人が4年総額50億円以上(推定)という好待遇で合意に達した。
外国人選手はほかに、マイナーの3Aで、23年に打率3割6厘、30本塁打、32盗塁で「トリプルスリー」を達成した外野手で前パイレーツのキャベッジ選手を獲得。1軍登録できる外国人枠「5」に対し、巨人では、昨季20試合に先発して6勝(4敗)をマークした長身左腕のフォスター・グリフィン投手、昨季途中から加入して今季は打線の中軸を期待されるエリエ・ヘルナンデス外野手らを合わせて、6人選手が争う構図となる。
補強に伴う日本人選手への影響も大きい。
指揮官はマルチネス投手の加入によって、これまで抑えを担ってきた昨季29セーブの大勢投手が8回に回る構想を描く。また、阿部監督はスポーツ報知の新春インタビューでキャベッジ選手を外野ではなく一塁で起用するプランを明かし、一塁を守った主軸の岡本和真選手は、三塁の坂本勇人選手の状態次第によって、三塁かレフトになる公算が大きくなった。
ヘルナンデス選手と岡本選手で外野の2枠が埋まる場合には、昨季に自己最多68試合に出場したオコエ瑠偉選手、56試合の萩尾匡也選手、40試合の浅野翔吾選手、59試合の佐々木俊輔選手らが、残り1枠をかけて競争が激化しそうだ。
楽天から移籍した田中投手は他の先発陣と生き残りをかけた勝負に挑む。阿部監督はスポーツ報知のインタビューで、昨季の最多勝に返り咲いた菅野投手(今季からオリオールズ)の再生に貢献した久保康生巡回投手コーチに復活を託すプランを明かしている。
田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。