「即日」「判断困難」「連絡先不明」の問題とは

 瀬戸さんは11月23日に大阪のクリニックを訪れ、脂肪吸引を受けた。あご下の脂肪吸引を受けることを希望し、契約した。カウンセリングを受けて、そのまま手術を受けるという手順となっていた。

 瀬戸さんの場合、美容医療を受け慣れており、希望も明確で、本人も即日施術を問題視していない。

 しかし一方で、瀬戸さんとは異なり美容医療に慣れない人が、漠然と美容医療を検討することもある。その人が即日施術となり、瀬戸さんのような合併症が万が一起きた場合、その後の対処が困難になった可能性があると筆者は考える。

 それは副作用の判断が難しいということが主な理由だ。これは瀬戸さんもそうだった。

 11月23日、手術は午後3時から始まって2、3時間で完了した。帰宅後、午後8時くらいから首の周囲が腫れ始めたが、瀬戸さんは軽い副作用かどうか判別できなかったと振り返る。4歳の子は無邪気に「ママ太り過ぎじゃない」などと言っていたというが、実際には命の危険が迫る深刻な状況だった。

「これは副作用なのかな?と思ってしまうんです。結局、私は呼吸が苦しくなって初めてこれはもう異常事態だと判断しましたが、その境目が素人には分かりづらい。通常の副作用なのか、それとも危険な状態なのか、その線引きが難しいです」(瀬戸さん)

 瀬戸さんは最終的に午後2時に救急車を呼ぶことになったが、施術したクリニックは緊急連絡先を設置していなかったという。電話の連絡も付かない状態だった。

 本人が副作用かどうか判断するのが難しく、しかも連絡先も不明である状況で、仮に美容医療の経験があまりない人であれば、対応が遅れる恐れは強まる。瀬戸さんは、息苦しくなったことから救急車を呼んだ。

 もしかすると緊急の連絡先があったのかもしれないが、施術を受けた本人が探し出せないのであれば意味がない。

 先に3点の課題を書いたが、これらは改善できるものだ。

 例えば、即日施術ではなく、事前に受けられる医療に関する説明や、合併症が起きた場合の説明を詳しく受けることはできるだろう。説明を受けた後、施術を受けるための心の準備をするために時間をおくことも重要だ。緊急対応が必要な副作用に関する情報提供は欠かせない。緊急連絡先も必要だ。