通貨高に悩む中銀と通貨安に悩む中銀
2022年1月初頭から2024年12月初頭までの名目実効為替相場(NEER)の変化率を比較した場合(図表②)、スイスフランは約+14%上昇しているのに対し、円は約▲16%下落している。
【図表②】
過去30年間のイメージとして1995年初頭から足元の対ドルでのパフォーマンス(1995年1月3日~2024年12月23日)を測ってみても、スイスフランの約+47%に対し、円は約▲36%である。
G7通貨に限って言えば、対スイスフランで取引して最も振れ幅の大きかった通貨が円である(ちなみにG10通貨で言えばノルウェークローネの約▲40%が円よりも大きい)。主要通貨同士でこれほど対照的な組み合わせは珍しい。
こうした状態をSNBと日銀の比較に引き直せば、「通貨高に悩む中銀」vs.「通貨安に悩む中銀」の対照性が鮮明である。
安全通貨としてならした両者の差はどこで生まれた?
前者は政策金利が下方向を目指しているにもかかわらず通貨高が止まらず、後者は政策金利が上方向を目指しているにもかかわらず通貨安が止まらない状況にさいなまれている。
かつては為替市場における2大安全通貨としてならした両者の差はどこで生まれたのか。
少なくともリーマンショックや欧州債務危機に揺れた2008~2012年は、金融市場のリスク許容度が傷つくと円やスイスフランが反射的に買われるという動きが常態化していたし、日銀もSNBも必死に通貨高(から来るディスインフレ圧力)を相殺することに心を砕いていた。
だが、過去10年余りを振り返ってみれば、スイスフランの騰勢は続き、円の凋落が続いている。