白い大理石の胸像の前にまっすぐ立ったゴーンは、顎を少し上げ、2つの自動車メーカーの提携を目指した旅の始まりを振り返った。
「ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、今月はルノー・日産アライアンスの誕生15周年にあたります。当初は、2つの平凡な自動車メーカー、しかもフランスのメーカーと倒産寸前の日本のメーカーを合体させたところで、どうすれば世界的な競争力を持つ組織をつくれようかと疑問視する声もありました」。それから左手を固い拳にしてこう続けた。「このような提携は誰も試みたことがなく、模範にできるものなどいっさいありませんでした」
「鏡の間」を案内する恋人のキャロル
ゴーンはその「戦史の回廊」に集められた聴衆を見渡し、この提携は自動車業界だけでなくあらゆる産業において「最も長く続いている異文化アライアンス」であると語った。
「今夜、この荘厳で歴史ある会場にお集まりいただいたみなさま、アライアンスとそのリーダーたちを支え、励まし、豊かにしてくださったみなさまに心から感謝の意を表します」との言葉でスピーチは締めくくられた。
主催者のスピーチ、豪華な食事、そしてマカロンとシュークリームが積み上げられたいっそう豪華なデザートが終わると、髪粉をまぶした貴族風のかつらと羽付き帽子をかぶった司会者を先頭に、キャロルがゲストを鏡の間に案内した。
美しく手入れされた庭園の広大な芝生を見下ろすその部屋で、一行は17の大窓と鏡がつくるアーケードを歩いた。花火が夜空に咲き、その光が鏡、ダイヤモンド、シャンパングラスに反射した。王のための一夜を締めくくるシーンとして、絵に描いたように完璧な光景だった。