当初想定の著名ゲストはほぼ全員出席せず

 しかし、その後の数週間で、著名なゲストのうちほぼ全員が出席できないとわかった。多忙すぎる者もいれば、たとえ会場がヴェルサイユ宮殿でも夕食会のためだけにフランスまで飛んでいく気にならないという者もいたようだ。

 中国人招待客は全員辞退し、ゴーンは中国政府が指示したのだろうと考えた。ロシア人たちも来られず、欧米による制裁措置で渡航が制限されているからかもしれないとゴーンは踏んだ。

 少し困ったことになった。すでに200人規模のパーティーを予約してしまったからだ。開催費は200名でも20名でも同じだが、ヴェルサイユ宮殿に20名というのは控えめに言っても寂しすぎる。日程を変更したところで、多忙な人々の今後の予定を当てにすることはできないので無意味だ。中止してしまうのも、出席を確定している数少ない人たちに失礼になる。

 大手自動車メーカー2社のトップである彼にとって、その提携を祝うパーティーの空席を埋める手段はいくつもあった。しかし、ルノーと日産の現・元幹部を招きたくはなく、アライアンス構築に貢献した何千人という人々も出席はできるだろうが除外したかった。ルイ・シュヴァイツァー(元ルノー会長)、パトリック・ペラタ(元ルノーCOO)、志賀俊之(元日産COO)などは候補に入らなかった。

 これは企業版の結婚式のようなもので、誰が招かれて誰が招かれなかったかという問題を起こしたくなかったのだ。また、日本をはじめ世界各地にいる社員のフランスへの飛行機代を会社が出すことにも抵抗があった。それでもパーティーは決行しなければならない。すでに費用をかけているのだから、何がなんでもできるだけ多くの席を埋めるのだ。