2014年3月9日午後7時30分、2300の部屋を持つルイ14世の宮廷で日産・ルノーとカルロス・ゴーンの功績を祝福するため、黄金の門の前に黒塗りの車が次々と到着しはじめた。

 黒ネクタイやイブニングドレスをまとった約150人の招待客が正面玄関までに通る石畳の中庭では、18世紀の廷臣たちを再現するために雇われた数十人の俳優が三角帽と絹のストッキングという姿で彼らを迎えた。

 ゴーンは社交的な雰囲気を漂わせ、ルイ16世よりは14世らしいと言えた。カクテルでの乾杯を終えると、まるで一般人が改装後の自宅の地下室を披露するように、「鏡の間」を囲む王族の居室を案内した。数ある控えの間にゲストが入るたびに雇われた演奏隊や廷臣姿の役者たちが出迎え、かつてこの宮殿を満たしていためくるめく放蕩を表現した。

恋人や家族がテーブルを囲む

 全員がディナーの席に着いたところで、ゴーンは挨拶のため壇上に立った。全員がひとつの巨大な長テーブルを囲み、アライアンスとかかわりのある財界人や政治家も座っている。

 日産が工場を持つセッジフィールドを選挙区としていたトニー・ブレア元イギリス首相の妻、シェリー・ブレアの姿もある。彼女の向かいに座るのは、日産が2003年に工場を設置したミシシッピ州選出の元アメリカ上院議員トレント・ロットだ。

 それでも、長テーブルの中央、ゴーンの正面に座る金髪の女性ほど彼を満面の笑みにさせた者はいなかった——恋人のキャロルだ。今日の彼女は、黒いスパンコールに覆われた、床まで届く長さのエリー・サーブのドレスに身を包んでいる。その他、ゴーンの子供たちと姉のクロディーヌもテーブルを囲んでいた。

2017年のカンヌ国際映画祭でレッドカーペットを歩くゴーン氏とキャロル夫人(写真:Abaca/アフロ)