ディナー担当はミシュランシェフのアラン・デュカス
2013年6月、ゴーンは広報責任者が翌年の主要イベントをまとめたパワーポイント資料に目を通した。
そこにはカンヌ映画祭をはじめ、サッカーのワールドカップや全仏オープンなどのスポーツイベントも含まれていたが、アライアンス誕生15周年をヴェルサイユ宮殿で祝うという豪華な行事もあった。200人を招く大規模なパーティーにしたいとゴーンは思っていた。予算は30万ユーロだ。
ヴェルサイユ宮殿を会場にすればみんな出席するだろうとゴーンは考えた。そのディナーパーティーはアライアンスおよび海外の取引先のための祝賀会だった。統合の仕組みはボトムアップでつくったが、結束したトップダウンの権力を、抗えないその力の存在感を強めようというわけだ。
このイベントは決してルノーと日産の社員のためのものではなかった。招待客リストに含まれたのは、日米の政治家、そしてブラジル、ブータン、ナイジェリア、韓国の各国首脳などだった。さらに、元官僚やこれまで中国やロシアで契約を交わしてきた実業家に加え、日本の大手企業のトップも招待することにした。
2014年1月下旬、彼らのもとにメールで案内状が送られた。カルロス・ゴーンの「ルノー・日産アライアンスをお支えいただいているパートナーのみなさまに敬意を表し、本夕食会にあなたとご同伴者様を心をこめてご招待いたします」というメッセージを添えて。
ディナーを担当するのはミシュランの星を獲得したシェフ、アラン・デュカスだ。そして、世界有数の権力者であるからこその偶然だろうか、日程はちょうどゴーンの60歳の誕生日と重なっていた。