「AIを活用した発明の真の所有者は誰か?」
5. 新たな知的財産権の争点と「AI特許係争バブル」
2024年までの段階でも、生成AIが学習に使うデータの著作権や、AIが生み出したコンテンツの著作権については絶えず議論が巻き起こっていた。2025年には、その議論が特許分野にも波及し、「AIによる発明」をめぐる新たな争点が顕在化した。いわゆる「AI特許係争バブル」の始まりである。
従来、発明をしたのは人間であり、発明者の記名が求められるのが通例だった。しかし、生成AIが研究開発の大部分を主導するようになると、「アイデアや設計図はAIが自動的に導き出したものであり、人間はただデータを入力しただけ」というケースが増える。
こうした場合、特許出願の際に「発明者」として誰を記載するのかが問題となる。さらに、個々の企業が独自にチューニングしたAIモデルによって類似の発明が複数生まれた時、特許の先行権をめぐって紛争が勃発する恐れが高まるのだ。
このように、生成AIが知財のあり方を大きく揺さぶる状況に鑑み、米国や欧州では「発明者にAIを記載することを認めるか否か」の議論が加速。一方、日本では、特許法の改正案として「発明者の概念を人間に限定しつつ、AIの貢献度合いを何らかの形で開示する義務」が検討され始めた。
この流れに呼応するように、世界中の特許法律事務所が「AI特許係争」のコンサルティングを新たなビジネスチャンスとして捉え、短期間で爆発的に市場を拡大した。
結果として、2025年には特許争いと法律改正の混乱が続出し、IT・製造・バイオ業界など、あらゆる分野に「AIを活用した発明の真の所有者は誰か?」という問いが突きつけられることに。これは単なる法律の問題にとどまらず、「創造性や発明性は人間だけのものなのか?」という哲学的な議論にも発展していったのだ。