10月1日朝、JR甲子園口駅前(兵庫県西宮市)で県民に激励される斎藤元彦・前知事

2024年も残すところあとわずかになりました。今年、注目されたニュースや出来事についてJBpressでよく読まれた記事をもう一度お届けします。今回は国内で実施された注目選挙に関する記事です。(初出:2024年10月5日)※内容は掲載当時のものです。

斎藤元彦・前知事の失職にともなう兵庫県知事選が10月31日告示、11月17日投開票に決まった。9月30日の失職から数日のうちに予想されていた候補者はほぼ出揃い、主要政党の方針も固まってきた。これまでになく全国の注目を集める知事選は、これまでにない混戦になりそうだ。そして、一足先に顔見せの「駅立ち」を始めた斎藤前知事の周囲では、自民・維新推薦の組織選挙だった前回とはまったく異なる支持層が生まれつつある。(以下、文中敬称略)

(松本 創:ノンフィクションライター)

「お辞儀や話し方も信頼できる」駅立ちに駆けつけた支持者は擁護

 兵庫県議会の全会派・全議員から不信任決議を受け、自動失職して2日目の10月1日朝、前知事・斎藤元彦の姿は西宮市のJR甲子園口駅前にあった。ダークスーツで背筋をピンと伸ばし、「おはようございます」「ありがとうございます」と通勤・通学客にひたすらお辞儀を繰り返す。

通勤・通学客にひたすらお辞儀を繰り返す斎藤元彦・前知事。背景ではテレビクルーが県民にインタビューする姿も

 その姿を遠巻きに撮影する報道各社の記者とカメラマン。それとは別にSNS発信などで斎藤をサポートするスタッフが5人ほどいる。3年前の前回選挙にも関わった神戸・阪神間の若手経営者らのほか、今回新たに加わった人もいるという。

「たった一人、ゼロから出直し」と斎藤本人は強調するが、告発文書問題が連日報道されて知名度は高まり、批判を浴び続けたことで、逆に「応援したい」という声も出てきている。斎藤に声をかけ、握手を交わしていく人も少なくない。

 そのうちの2人に話を聞いた。まず22歳の男子学生。

「(斎藤に対する)メディアの批判は過剰だし、百条委員会(県議会の文書問題調査特別委員会)も全部見たけど、報道と違うと感じるところもあった。県庁内でいろいろ(抵抗が)あったのかな、と。斎藤さんは若者・Z世代応援をかなりやってくれていた。評価するべきところは評価したい。3年前も投票した者として、ちゃんと最後まで追わないと、と思っています」

 50代の主婦は、斎藤の活動を伝えるX(旧ツイッター)のアカウントで駅立ちの場所を知り、一言かけたくて神戸市内から電車で駆けつけた。

「味方が一人もおらず、どれだけ誹謗中傷を浴びても真摯に対応されている。お辞儀や話し方などの所作からも信頼できる方だと思います。これまでは政治に興味がなく、斎藤知事が何をしたかも知らなかったけど、今回いろいろと学びました。やっぱり改革しようと思えば、抵抗勢力は必ず出てくるものだし、もう少し丁寧に進めればよかったのかな、と」

 前回知事選は別の候補者に入れたという。吉村洋文・大阪府知事が斎藤を応援するのを見て、「兵庫が大阪の言いなりになるイメージがあったから」。

 だが、一連の文書問題で認識が変わった。