予想に反して「ソフトムード」となった理由

 だが、2014年、2017年に続いて、習近平主席自らが南京の式典に赴くことはなく、党常務委員(トップ7)を派遣することもなかった。派遣したのは、党中央政治局委員(トップ24)の一人、李書磊(り・しょらい)党中央宣伝部長だった。

「習近平同志を核心とする党中央の周囲に、さらに緊密に団結し、万人が一心で意を込めて奮発し、中国式現代化を全面的に推進して強国を建設し、民族復興の偉業に努力奮闘し、人類の平和と発展の崇高な事業にさらに大きな貢献をしていこう……」

 李部長の演説は、ずいぶんとソフトムードだったのである。また、この日のCCTV(中国中央広播電視総台)の夜7時のメインニュース番組『新聞聯播』でも、このニュースは5番目に短時間、報じられただけだった。

 この日、SNSやネット上でも、反日的な映像や書き込みなどが、次々に削除された。そして、さらなる死傷事件などが起こらぬよう、全国の公安を動員して厳戒態勢を敷いたのだった。

 結局、この日に日本人が被害に遭うことはなかった。ちなみに中国は、11月30日から日本人の「ノービザ入国」を30日間認めている。

 これらは習近平政権の「親日政策」への転換を意味するのか? そこはやはり、「2つの危機」に備えた「戦略的親日」であることを、冷静に見据えるべきだろう。すなわち、中国経済の危機と、ドナルド・トランプ米新政権が来月20日に発足することに対する危機感である。

 2025年の日中関係も、中国経済と米中関係という二つの要素によって「変化」していくものと思われる。