撤退理由「市場環境の激変」とは?
以下が、ホンダからの文書による回答である。
Q:ホンダのGMクルーズとの連携解消については?
「本日(米時間12月10日)GMが発表した内容が正式決定すれば、ホンダはクルーズから手を引くことになる」
Q: 2026年から都心で計画していた実証は中止か?
「正式決定していないが、本日GMが発表した内容が正式決定すれば、日本での3社ジョイントベンチャーによる計画は中止を含め判断する」
Q:ホンダ独自でロボットタクシーの実用化を目指すのか?
「様々な技術の研究開発は行っており、今後も新価値提供に向けて検討を進めていく」
以上がホンダからの回答だが、本稿執筆時点(12月13日午前)でも本件に対するホンダからのニュースリリースは出ていない。
ホンダとしては、GMが先行投資するロボットタクシー事業に相乗りした形だったが、当のGMが「市場環境が激化した」として撤退してしまったのだから、ホンダとしては動きようがないということだろう。
では、GMが撤退理由に挙げた「市場環境の激化」とは具体的に何を指すのか。
これは、生成AIを活用した完全自動運転に対して、IT業界を中心に巨額の投資が行われていることを指すとみられる。
代表格は、グーグル(親会社はアルファベット)から独立したウェイモだ。日本の自動運転業界関係の複数人は「自動車メーカーによる投資額とは桁違い」と口をそろえる。
桁も、1桁ではなく2桁違うと表現する人もいるほどだ。つまり、数百億円に対して数兆円ということである。
他方、電気自動車(EV)大手のテスラは米現地時間の10月10日、ロサンゼルス郊外のワーナー・ブラザーズスタジオで自社イベント「We、Robot」を開催した。その中で、車内にハンドルやペダルがない、自動運転レベル4(完全自動運転)のロボットタクシーを2026年に3万ドル(1ドル150円換算で450万円)で発売すると発表した。
実際に複数のロボットタクシーにイベント来場者を乗せて、場内を走行してみせた。
GMが撤退する一方で、ウェイモやテスラなど一部の企業はなぜロボタクシーに注力し続けるのか。
それは、グローバルでデファクトスタンダード(事実上の標準)を取ることで、ハードウェアやソフトウェアを手がける企業だけではなく、ロボタクシーが生み出す走行データなどを基盤として、多様なビジネスを呼び込むことができるとの目算があるからだ。それは、プラットフォームを握ることでそれを利用する企業やユーザーから莫大な利益を上げてきたIT業界の発想だ。
ようするに、自動運転に関する研究開発や事業開発の潮目が、これまでの「自動運転車をいかに開発するか」という段階から、「自動運転のプラットフォームをいかに握るか」という段階へと大きく変わったと言えるだろう。そのための投資競争についてこられない企業は、脱落するしかない。