これらの動きに対して、尹錫悦も反発し、12日午前には国民向けの談話を発表し、戒厳令布告を正当化し、「弾劾であれ捜査であれ、立ち向かう」と強調した。そして、国政を麻痺させる野党こそ反国家勢力だと非難し、「巨大野党が支配する国会が、自由民主主義の基盤ではなく、自由民主主義の憲政秩序を破壊する怪物になった」と述べた。さらに、「非常戒厳を宣言する権利の行使は司法捜査の対象にならない統治行為だ」とした。
弾劾案可決の可能性大
この最後の点の「憲法上定められた非常戒厳布告権が司法捜査の対象にならない統治行為」というのは、その通りであろう。しかし、憲法77条の第4項には「戒厳を宣布したときは、大統領は、遅滞なく国会に通告しなければならない」と定めてあり、さらに、第5項には「国会が在籍議員過半数の賛成に依り戒厳の解除を要求したときは、大統領は、これを解除しなければならない」とある。
ところが、軍隊を派遣して国会を閉鎖しようとしたことは、この国会承認規定を無力化する行為であり、それが憲法違反で、尹錫悦こそ内乱罪だという野党の主張に繋がっている。
弾劾訴追案が可決されても、最終的には憲法裁判所の審判を待たねばならない。審判では、180日以内に妥当性を判断し、裁判官9人のうち6人以上の賛成で大統領は罷免される。その場合には60日以内に大統領選が行われる。
野党は、弾劾訴追を可能にするために、与党議員の引きはがしを行っている。2016年12月に朴槿恵大統領を弾劾訴追した際に、野党は、与党の「国民の力」の前身のセヌリ党から約60人を造反させ、訴追案を可決させることに成功している。今回は8人(実際は9人?)が反旗を翻せば、弾劾訴追案は可決される。