そもそも「アサド政権」とは
シリアは古代文明が栄えた街がありながら、国としての歴史はそう古くありません。16世紀から20世紀前半まではオスマン・トルコ帝国の支配下にあり、フランスの委任統治を経て独立したのは第2次世界大戦後の1946年でした。
独立後、イスラム教の宗派対立が絡むクーデターを繰り返し、政治は安定しませんでした。それを独裁という形で安定させたのは、ハーフィズ・アサド氏。今回ロシアに亡命したアサド大統領の父です。
軍人だったハーフィズ氏は1969年の政変で実権を握り、1971年に国民投票で大統領に就任すると、バース党を率いて独裁体制を築き上げました。2000年に息子のバシャール・アサド氏が政権を継承した後も、バース党による一党独裁が続きます。
2011年に民主化運動「アラブの春」が広がった際には、軍を動員して国民の抵抗を封じ込めたことから、内戦に発展しました。アサド政権は、反政府活動を展開する国民に向かって化学兵器を使用するなど、「今世紀最悪の人道危機」と言われる状況が長く続いたのです。
2015年には国連安全保障理事会がアサド政権と反政府勢力に停戦・和平を促す決議を採択しましたが、内戦は今に至るまで止まっていません。