イスラエルがシリア領内に進軍した理由は

 シリア南西で国境を接するイスラエルも動きました。アサド政権崩壊後、シリア国内の混乱をにらんで軍をシリア領内に侵入させたのです。イスラエルは、1967年の第3次中東戦争で占領したゴラン高原について「永遠にイスラエルの不可分の領土であり続ける」と強調。国連の監視下にある緩衝地帯に進軍し、緊張を高めています。
 
 イスラエルはさらに、アサド政権軍の保有するミサイルや化学兵器などがシリア国内の反体制派に流れることを許さないとして、政変後、シリア各地での空爆を続けています。すでに空爆は約150カ所に及び、海軍施設や艦隊も破壊。アサド政権軍の軍事力の約8割を破壊したと表明しています。

シリアとの緩衝地帯を掌握したイスラエル軍(写真:AP/アフロ)

 一方、大国はどうでしょうか。ロシアはアサド大統領の亡命を受け入れたものの、反政府勢力の政権奪取に対しては介入する構えを見せていません。ウクライナ戦争に注力する姿勢です。

 米国のバイデン大統領は独裁政権の崩壊について「米国によるクルド人勢力支援の成果だ」として歓迎の意向を示しました。しかし、トランプ次期大統領は「われわれの戦いではない」として、深入りを避ける構えです。