ポイント③:目的を社内全体で共有する
ポイントの三つ目は、省力化投資の目的を社内全体で共有することである。
省力化のために設備投資をすると聞いた多くの従業員は、自分の仕事がなくなってしまうのではないか、今まで培ってきた経験やノウハウは無駄になってしまうのではないか、などと不安や怒りを感じるのではないだろうか。
経営者は省力化投資の目的を明らかにし、従業員に示すことで理解と納得を得ることが大切である。事例企業の経営者は従業員と対話を重ね、省力化投資は従業員の雇用を奪うのではなくむしろ雇用を守るためであることを丁寧に説明し、理解と納得を得ている。
例えば、群馬県富岡市で精密プラスチックの射出成型品加工を営む株式会社土屋合成は、感情のない効率化や生産性の向上、コスト削減の追求が目的ではなく、従業員にとって働きたいと思える職場にすることが目的であることを社内外に明示している。
タヤマスタジオが「AI師匠」と称するシステムは、ベテランの職人が本業である鉄器づくりに集中できる時間を確保するためのものである。
目的が明確だからこそ、田山貴紘社長の父で伝統工芸士である田山和康さんは、AIの開発に快く応じてくれたのだろう。