一体感を超越したカリスマバンド

 そして、PIERROTは冒頭で触れた狂信的なファンを生み出すカリスマ性を持っているバンドであり、選民思想やニヒリズム、のちの俗に言う“中二病”を色濃く表しているバンドだ。ナチスドイツのアドルフ・ヒトラーをテーマにした「Adolf」は、そんな彼らの代表曲のひとつ。画家を志していたヒトラーの芸術性の側面や恋愛観、そしてイデオロギーを表現した詞が綴られている。

 不気味な異国情緒を感じさせるシタール風のギターフレーズと、これまでのヴィジュアル系楽曲にはあまり見られなかった“横ノリ”のビートが、怪しく妖しい雰囲気を醸し出す。シーンにおけるPIERROTのポジションを大きく印象付けた楽曲と言っていいだろうし、同時にヴィジュアル系シーンにおける“振り”文化を定着させたと言っていい楽曲である。

「Adolf」(1997年)

“お立ち台”の上にボーカリストが立ち、オーディエンスを扇動していく。そんなヴィジュアル系バンドのライブにおける見慣れた光景は、PIERROTが広めたのかもしれない。台の上のキリトに合わせて何千人というオーディエンスが一糸乱れぬ動きを見せる光景は、一体感を超越した、まさに狂信的と言い表すに相応しいものだ。その代表曲がこの「Adolf」である。

 ゆったりとした横ノリのビートに合わせ、会場いっぱいのオーディエンスが、頭上で両手首を打ち鳴らしていく様相は、何かの儀式のようでもある。そのインパクトは大きく、多くのバンドに影響を与えたことは間違いないだろう。

 そして、PIERROTはバンドアンサンブルにおけるアレンジメントについても大きな特徴を持っている。アイジと潤、2人のギターは従来のバンドには見られなかったツインギタースタイルだ。