「二次相続」が大量発生すると…

 2000年当時の相続件数、つまり死亡者数は首都圏全体で21万2千件だった。20年後の2020年にはその数は39万2千件。なんとこの間で84.9%も増えている。

 いっぽう首都圏における個人住宅空き家数は2003年で39万2000戸だった。ところが20年後の2023年では66万1000戸と68.6%も増加している。内訳は東京都が21万4600戸(52.4%増)、神奈川県15万600戸(73.9%増)、千葉県15万8100戸(77.4%増)、埼玉県13万7600戸(82.5%)とその数を伸ばしている。

 高齢の単身者が亡くなると、そのひとが住んでいた家は賃貸住宅であれば、他のテナントに貸すことになるが、持ち家の場合には相続人に引き継がれる。相続人は引き継いだ家に自らが居住する以外は、賃貸に供する、または売却する、という選択を行うことになる。そしてどの選択も採用しないでいると家は空き家化する。

東京でも今後、空き家がますます増えていくことが予想される(写真:baking/イメージマート)東京でも今後、空き家がますます増えていくことが予想される(写真:baking/イメージマート)

 この20年間を振り返るに、比較的マーケットでの流動性が確保されているはずの首都圏においても大量の空き家が発生しているということは、家が余り始めていることを如実に示しているといえる。

 2030年以降、首都圏では大量の相続予備軍が存在している。高齢者単身世帯が激増しているということは、同居をしている人がいないことを意味する。つまり相続でいえば、夫婦のうちの片方が亡くなる「一次相続」はすでに行われており、残されたもういっぽうが亡くなるという「二次相続」が今後大量に発生していくことが容易に想像される。

 一次相続の時には、夫婦のいっぽうが残されているので、引き続き家に住む、あるいは高齢者施設に入所しても家は時々帰って住む、物置として使う、などして残すことが多い。

 また一次相続の場合は、相続税評価額を算定する際、多くの特典があり、相続税を課されるような家はあまりない。具体的には配偶者特別控除と小規模宅地等の特例の2つの特典の存在だ。

 配偶者控除は配偶者が存命の場合、相続税評価額から一律で1億6000万円を控除できる制度で、多くの世帯がこの控除額を利用すれば相続税を課税されない。さらに自宅については小規模宅地等の特例措置が適用され、200m2以下の住宅用敷地に関しては、相続税評価額を20%とする、つまり80%圧縮(減額)される。都内の戸建て住宅が実家であっても、この2つの特例があれば多くの相続人は、一次相続では相続税を課されるケースは稀になる。