あと5年もすれば「首都圏大量相続時代」へ

 見逃せないのが、高齢者単独世帯の増加だ。生涯独身の人もいるだろうが高齢夫婦のうち片方が亡くなり、高齢者が独居している世帯が多くを占めている。20年間でなんと2.5倍。後期高齢者単独世帯に絞れば、3.3倍の激増である。

(筆者調査データをもとにJBpress編集部作成)
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 単独世帯といえば、以前は学生や結婚前の若い社会人の住まいと考えられてきた。ところが、この20年間の単独世帯の増加状況をみれば、単独世帯全体の増加率(71%増)をはるかに上回る勢いで高齢者単独世帯が増加している。

 首都圏の中でも高齢者単独世帯の増加が顕著なのが、千葉県や埼玉県だ。千葉県の高齢者単独世帯は2000年には9万7千世帯であったものが2020年には30万世帯と約3倍に。埼玉県は同9万7千世帯から33万3千世帯と3.4倍の増加を記録している。このうち後期高齢者単独世帯は、千葉県で4万1千世帯から16万5千世帯と約4倍、埼玉県で3万9千世帯から18万1千世帯と約4.5倍に膨らんでいる。

 最近は東京一極集中などと表現されるが、首都圏の中でもひとの出入りが激しく、若者層が集まるのは東京都だけで、周辺3県は高齢化がすすみ、高齢者単独世帯の割合が高くなっているのである。

 戦後地方から首都圏に出てきた若者が、都内などで職を得て、結婚をして家族を成し、求めた家が首都圏郊外の家だった。猛烈サラリーマンなどと言われ、家族のために粉骨砕身働き、現在ではリタイアして老後生活を楽しんでいるいっぽうで子供たちのほとんどは都心に出て、家からは独立している。家に残されたのは夫婦二人きり。

 そのうち、夫婦のうちどちらかが体調を崩し、病院に入院する、高齢者施設に入居する、亡くなるなどして高齢者単独世帯になっていく。東京都を取り囲む、千葉県、埼玉県、神奈川県などで高齢者単独世帯が増える背景だ。

 団塊世代と呼ばれる1947年から49年生まれの人たちは人口ピラミッドの中ではボリュームゾーンを形成していて、首都圏では現在でも約155万人がいる。2020年段階では、まだ団塊世代は後期高齢者にカウントされていないが、2025年までには団塊世代の全員が後期高齢者の仲間入りを果たす。後期高齢者単独世帯の割合はさらに高くなるものと推測できる。

 2030年というとなんだか遠い先の話のように聞こえるかもしれないが、ほんのあと5年余りの時間だ。75歳以上の後期高齢者のうちのかなりの数が鬼籍に入ることになる。首都圏大量相続時代の到来だ。

 では首都圏ではどのくらいの相続が発生しているのだろうか。